内定を勝ち取る選考対策とは|キャリア戦略論⑥ - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜
内定を勝ち取る選考対策とは

「キャリア戦略」を設計して、応募先が決まった後は、勝負どころとなる「選考」の過程を迎えます。

志望する仕事に就ければ、楽しく働くことができ、高いスキルを培うことができる。さらには、それによって収入に恵まれる上に、次も良い転職ができる――というように、就職活動は後の人生にさまざまな影響を及ぼします。

しかし就職活動の選考は、応募書類の作成や面接など、大学入試の筆記中心の試験などとは大きく異なります。そのため特に学生からは、対策法が分からないと悩む声をよく聞きます。

本記事では、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループをはじめとするコンサルティングファーム、投資銀行、総合商社、IT・デジタル企業などの難関企業への転職で、圧倒的な合格率を誇るコンコードの選考対策メソッドの一端をご紹介したいと思います。

なぜ、“良い経歴”であっても、選考で落ち続けるのか?

なぜ、“良い経歴”であっても、選考で落ち続けるのか?

「採用企業は、経歴や実績を見て、適正に評価してくれるはずだ」と考えている方がいますが、果たしてそうでしょうか。

実は、就職活動や転職活動の成否は、準備や対策が鍵を握ります。それを理解していないと、素晴らしい経歴や実績があったとしても、選考に落ち続けることもあります。

「準備や面接スキルで結果が変わるなんておかしい」「面接対策なんて、小手先だけのテクニックだ」――と考えるのは、早計です。後述するように、選考では “社会人としての心構え”が問われているのです。

先日、30代半ばの男性が転職のご相談にいらっしゃいました。ご自身で応募した4社すべてが、書類選考でNGとなってしまったそうです。

ご経歴を伺うと、名門大学を卒業し、在籍企業での実績も申し分ありません。応募先の企業にもフィットする経歴で、問題なく通過しそうでした。

書類選考には運の要素が多少はあります。偶然にも「同時期に似た経歴の人を採用したばかり」だったことから落選する、といったこともあり得ます。とはいえ、さすがに4社で全滅というのは理解しがたいことです。

しかし、応募書類を拝見した瞬間に、合点がいきました。まるでメモ書きのような職務経歴書で応募されていたのです。在籍していた部門名と実績が、箇条書きで記載されているのみ。フォントサイズもバラバラといったありさまでした。

「自分は“良い経歴”だから、当然採用してもらえるだろう」と、ご本人は気軽に考えていらっしゃったのですが、実際はそんなに安易なものではないのです。

私たちの会社へ相談にいらっしゃる優秀なビジネスリーダーの皆さんも、履歴書や職務経歴書を書き直し、志望動機書を練り直しています。面接に際しても、回答内容と伝え方について整理します。そして、失敗しないように何度も口頭で練習してから本番に臨んでいます。

この選考対策は、応募者の能力や実績を等身大以上にアピールするということではありません。経歴や人物像を“聞き手の気持ちをくみながら”“誤解のないように”“わかりやすく”伝えることが目的なのです。

さらに、難関企業では「ケース面接(ケースインタビュー)」が課せられることがありますので、その対策も行ないます。ケース面接とは、特定のビジネスシチュエーションを想定して、面接官とディスカッションする形式の選考です。特殊な面接なので、優秀な方でも、初見では要領がつかめずに落ちてしまうことが多く、特に注意が必要になります。

一流のビジネスパーソンは「準備」をする

一流のビジネスパーソンは「準備」をする

「一流企業で活躍するビジネスリーダーが、面接対策をしているの?」と驚かれた方もいるでしょう。

しかし考えてみれば、ビジネスの場において、念入りに準備をしたり練習したりすることは、当たり前のことです。

自社製品を売る営業部員も、資金調達を行なう起業家も、魅力をわかりやすく伝える資料を練り込み、想定問答に対する回答を用意するものです。本番に備えて、ロールプレイングで実際に話す練習もするでしょう。さらに慎重な人であれば、小口の顧客で営業に慣れてから、本命の大口顧客へアプローチするかもしれません。

むしろ、このような「準備」をできない人は、一流のビジネスパーソンとは見なされないでしょう。相手の気持ちを想像した上でわかりやすく誤解のないように伝える努力や工夫をできる人材が、企業からは求められているのです。

前述のご相談者も、私たちと一緒に履歴書や職務経歴書を編集し直して、落ちた会社へ再応募しました。すると、4社すべてで書類が通過。見事に第1希望の企業から内定を獲得して、ご入社されました。

もちろん、応募者の経歴や実績は何も変化していません。それにもかかわらず、同じ企業へ応募して「書類選考NG」という結果と「内定」という結果に分かれたのです。この合否によって、後のキャリアにまで大きな差がつくことを考えると、選考対策の重要性がお分かりいただけるかと思います。

このように人生に大きな影響を与える選考対策ですが、難関資格取得のような膨大な時間と労力がかかるわけではありません。その意味でも、選考対策をおろそかにするのは、もったいないことです。

書類選考対策は、相手の気持ちや立場を想像することが鍵

書類選考対策は、相手の気持ちや立場を想像することが鍵

選考における最初の関門は、書類選考です。

前述のように、経歴や実績が同じであったとしても、書類の書き方で合否が分かれてしまうのが実態です。それほどまでに重要であるにもかかわらず、誤解の多い準備でもあります。

例えば、転職に関する一般的なノウハウ本では、「自分の挙げてきた実績を、具体的な数字で職務経歴書に記載せよ」と書かれています。ところが、職種を変えてキャリアチェンジするような場合には、この常識はまったく当てはまりません。

営業職の方が、コンサルファームへ転職するケースを考えましょう。「A商品をX億円売り上げた」と応募書類でアピールしても「うちに入社したら、A商品の営業をするわけではないんだよね。この実績に何の価値があるの?」となってしまいます。

問題解決能力を重視するコンサルファームとしては、応募者が業務の中でどのように問題に向き合い、どのように解決してきたのかというプロセスを知りたいのです。

A商品を売った実績をただ記述するのではなく「顧客分析を通じてセグメント別の施策を打ち立て、営業部門の販売戦略を再構築した結果、X億円の売り上げを実現した」と記載すれば、「問題解決能力が高い人材だ」と理解してもらえるでしょう。

コミュニケーションの際に、相手の気持ちや望んでいることを汲んだ上で、伝える内容や方法を工夫することはとても大切です。それと同様に、採用企業や面接官の気持ちや立場をよく想像してから応募書類を作成することが、書類選考対策の鍵となります。

これは、一流のビジネスパーソンとして活躍するために大切な心構えでもあります。

筆記試験対策は “手を動かして”練習する

筆記試験対策は “手を動かして”練習する

続いての関門は、筆記試験です。

筆記試験を突破できなければ、面接を受けることすらできません。人気企業には、試験に強い名門大学の学生が殺到します。そのような筆記試験に“丸腰”で向かうのは危険です。

大学入試や司法試験、公認会計士試験を受験するのに、対策を何もしないという人はまずいません。おそらく出題傾向などを把握して、練習問題で慣れてから受験するはずです。同様に、就職活動においても、しかるべき対策をする必要があります。

就職活動における能力適性試験は、中学受験における算数や国語に近い問題が出題されます。試験本番の制限時間がある中で、久しぶりに見るそれらの問題を解こうとすると、予想以上に解けずに焦る方も多いようです。しかも、Webテストで実施されるため、慣れているペーパー形式とは勝手が異なります。

本来の実力を発揮できるようにするためには、練習がいります。もちろん、少しやればすぐにカンをつかむことができるでしょう。対策本をもとに、“手を動かして”練習することが、筆記試験対策では大切です。

面接では、「協働する仲間に相応しいか」を確認されている

面接では、「協働する仲間に相応しいか」を確認されている

最後の関門は、面接です。

面接は、人物・実績・志望理由などを確認する「通常面接」と、ディスカッションを行なう「ケース面接(ケースインタビュー)」と、候補者からの質問に対応する「質疑応答」から構成されます。

(1)通常面接対策

通常面接における主な内容は、志望理由と自己PRです。

シンプルな論点ながら、仕事への情熱、自己管理能力、他者への思いやり、成長意欲等々、協働する仲間にふさわしい人物か否かが、さまざまな角度からチェックされます。面接の場ではどうしても緊張してしまいますので、失敗しないように、実践形式で練習しておくことは欠かせません。

志望理由の説明ひとつをとっても、準備や練習なしに臨むのは難しいものです。あまりに壮大な夢だけを熱く語っては「目の前の仕事にしっかり打ち込んでくれるのかな?」と不安に思われてしまうこともあり得ます。

自分の想いを伝えることはもちろん大切ですが、ビジネススキルを持たない新卒学生を粘り強く育ててくれる採用企業の気持ちをよく考えることも必要です。採用企業にとって納得感のあるロジックで、ストーリーを組み立てましょう。おそらく、採用企業で行う仕事そのものへの熱い想いが重要になるはずです。

また、自分の話し方や表情、しぐさが、受け手に与えるインパクトを意識して、ブラッシュアップしておくことも、非常に大事です。自分では気づきにくいことですので、友人や先輩、あるいはインターン先の上司からフィードバックをもらうことも有用でしょう。

自分の面接練習の様子を録画して確認する手法もお勧めです。「無表情でリアクションが薄いので、相手が話しづらそうだな」「うん。うん。とあいづちを打っているので、目上の人に対して失礼な印象があるな」など、マイナスな印象を与えるクセが見つかることも珍しくありません。

これは、「他人の目を気にして、それに合わせる」という発想とは、まったく異なります。仕事とは、自分の能力やスキルによって、他者へ貢献することで、人々を幸せにし、社会をより良くしていく活動です。他者への貢献が仕事の鍵となるならば、自分の行動やふるまいが、他者に与えるインパクトについて配慮するのは、当然のことです。

コミュニケーションのあり方や人との関わり方を見直して、自分が望む姿に近づくことは、人生を豊かにします。就職活動や転職活動は、そのための好機といえるでしょう。

もちろん、面接で身の丈以上にアピールしても、ベテランの面接官からは見抜かれてしまいますし、仮に入社できたとしても、将来的には互いにとって不幸な結果となる場合もあるでしょう。あくまで、自分の経歴・人物を“聞き手の気持ちをくみながら”“誤解のないように”“わかりやすく”伝えるということが大切です。

(2)ケース面接対策

名門大学の学生に人気の高いコンサルティングファームでは、ケース面接を課せられます。

前述の通り、ケース面接とは、特定のビジネスシチュエーションを想定して、面接官とディスカッションする形式の選考です。要領がつかめないと、コンサル適性が高い方であっても、落ちてしまうことが多々あるので注意が必要です。

例えば「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには?」「自分がソニーのCEOだったらどうする?」といったお題を面接で出されて、皆さんは的確に答えられるでしょうか。

ケースを初めて見た方の多くは、どのように答えるべきかさえ、ピンと来ないと思います。仮に、良いアイデアを思いついたとしても、論理的な説明でなければ面接官に受け入れられません。以下のような展開で失敗してしまうケースがよくみられます。

面接官「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには、どうすれば良いと思いますか?」

応募者(コンサルタントは結論から話す…だったな)「○○をすると良いと思います」

面接官「なぜ、そう考えるのですか?」

応募者「ええっと……。それは、××だと思うからです」

面接官「なぜ、そう思うのですか?」

応募者「ええっと……。うーーん」

ケース面接では、優秀なビジネスパーソンであっても、決して容易に回答できないような設問が投げかけられます。ましてやビジネス経験の浅い学生であれば、途方に暮れてしまいますよね。

そもそも、この禅問答のような面接は、何のために行なわれているのでしょうか。実は、ケース面接突破の鍵は、この「ケース面接では何を見られているのか」という点を適切に理解することにあるのです。

ケース面接では「ディスカッションパートナー」としての適性が判断されています。頭の回転の速さ、ロジックツリーや3C、4Pなどのフレームワーク活用スキルばかりが見られるわけではないのです。知力のみならず、問題解決に対する姿勢や協働するマインドなどが、全人格的に評価されます。議論で相手に勝つことを目指すディベートとは異なりますし、よく考えずに賛同する“良い人”が求められているわけでもない点に注意が必要です。

上記を理解した上で、「ATLAS」内の記事や下記のようなケース対策本や問題解決本で学び、実践形式の対策を行うと良いでしょう。

『過去問で鍛える地頭力』(大石哲之著、東洋経済新報社)

『新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術』(齋藤嘉則著、ダイヤモンド社)

(3)質疑応答

面接の最後では、応募者からの質問や疑問に対して面接官が回答する質疑応答が行なわれます。

難関のケース面接を終えて少しほっとしたタイミングで行なわれることもあり、応募者の価値観や本音を確認しやすい時間でもあります。その意味でも、面接官は、この応答を大切にしています。当然のことですが、応募者の仕事に対する姿勢が見られますので、気を抜かないように留意してください。

入社後に「想定と違った」ということがないように、確認すべきことはしっかりと質問をしましょう。ただし、どのように質問すれば、志望動機や自己PRと矛盾が生じないのか、あるいは、自分が確認したい情報を的確に得られるのか、といったことまで配慮して、質問内容を準備しておくことが不可欠です。「何か質問はありますか」と面接官に聞かれた際に、その場の思いつきで浅い質問をすると火傷をすることもありますので気を付けましょう。

合否の結果にとらわれすぎない

合否の結果にとらわれすぎない

最後に皆さんへお伝えしたい大切なことがあります。

それは、「就活の合否結果にとらわれすぎない」ようにしていただきたいということです。仮に第1志望や第2希望の企業で不合格となってしまったとしても、過剰に落ち込まないでほしいのです。

例えば、外資系戦略ファームであれば、一つ一つの企業の採用枠は狭いため、「A社に合格したい」と思っていても、その1社で確実に内定を勝ち取るということはとても難しいです。倍率が高いというだけでなく、コンサル適性があってしっかり準備していたとしても、面接官との相性などの運の要素もあります。

しかし、改めてコンサルティング業界全体を広い視野で捉えてみれば、たくさんのファームがあることに気づけます。しかも、経験できる業務や身に付くスキルは、ほとんど同じです。特定のA社にこだわらずとも、B社やC社でも素晴らしいキャリアが待っています。

当然ですが、特定の会社に入ることが人生の目標ではありません。その会社に入ることは、自分のキャリアビジョンを実現するためのプロセスでしかないのです。そして、そのキャリアビジョンに至る道は無数といえるほどあります。

もちろん、第1志望の企業から内定を得られたとすれば、それはとても喜ばしいことです。しかし、社会人として何かを成し遂げたわけではなく、ようやくスタートラインに立っただけ。これからが本番であるとの認識を持ち、より良い社会人のスタートを切れるように、卒業までの時間を大切に過ごしましょう。

就職活動は、社会人としての成長の好機です。結果にとらわれすぎずに、学びのプロセスを大切にしていただければと思います。

著者

コンコードエグセクティブグループ代表・CEO 渡辺 秀和

2008年、コンコードエグゼクティブグループを設立。外資系戦略コンサルタント、PEファンド、ベンチャーCxOなどへ1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援。「日本ヘッドハンター大賞」初代MVPを受賞。2017年に東京大学で開講されたキャリアデザインの授業「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクター。2022年、「キャリア教育プラットフォーム」コンコードアカデミー代表取締役会長就任。 著書 『未来をつくるキャリアの授業』、『ビジネスエリートへのキャリア戦略』は東京大学の教科書に選定された。『新版 コンサル業界大研究』は東大生協本郷書籍部で第1位を獲得。

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