
今回は東京大学工学部システム創成学科Cコースへ進学した後、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻で修士課程を修了し、世界的な経営戦略コンサルティングチームであるStrategy&に入社された中元雪絵さんのインタビューをお届けします。
──本日はよろしくお願いいたします。初めに簡単な自己紹介をお願いします。
中元さん:中元雪絵と申します。私は2018年に東京大学のシステム創成学科を卒業した後、工学系研究科技術経営戦略学専攻という大学院に進学し、修士課程終了後にStrategy&に新卒で入社しました。
──ありがとうございます。それではまず、中元さんが入学した際の科類と、その理由について教えてください。
中元さん:私は理科Ⅰ類に入学しました。入学前は、理科Ⅰ類の進学先が物理、理科Ⅱ類の進学先が生物というぼんやりとしたイメージがありました。私は数学が比較的得意だったので、どちらかというと物理に近い理科Ⅰ類のほうが自分に合っているのかなと思っていました。

──その後、前期教養学部時代を経て、どのような進学選択をしようと考えましたか?
中元さん:私はテクノロジーの方面に興味があったので、工学部がいいかなというのは考えていて、その中で都市工学科や社会基盤学科なども選択肢に上がってきました。他にもいくつか選択肢がある中で、どうしようと非常に悩みましたね。最終的には、ひとつの専門分野を深く掘り下げるよりも、「この技術を使ってこの世界は今後どうなっていくのだろう」というような大局的なことを学ぶことに興味があり、技術についても学びつつ、広い視野でビジネスや政策などについても学べるような学科が良いと思い、システム創成学科を選びました。
──実際に進学してみていかがでしたか?
中元さん:基本的には思っていたとおりで、技術に関しては材料力学や流体力学などの授業もありましたし、ビジネスに関してはゼロからアイデアを考え、企業に対して発表するというような授業もありました。システム創成学科は色々な機会がある学科で、この点は思っていたとおりでとてもよかったなと思っています。
──進学前とのギャップはありましたか?
中元さん:システム創成学科でも専門性が付くというのは、良いギャップでした。理系としてキャリアを考えたとき、何か高い専門性が必要になるイメージがあったので、「具体的に何を勉強している学科かよくわからない」と言われるシステム創成学科に入る前は専門性の習得で少し不安がありました。しかし、実際に入ってみると、そもそも研究を通じて自分のひとつの専門領域ができますし、授業でもテクノロジーについて思ったより深く学ぶことができ、この点は思わぬギャップがあったと言えますね。
──システム創成学科は学部での就職も多いとお聞きしたのですが、なぜ院進を選ばれたのですか?
中元さん:学部時代のデータサイエンス領域の研究がとても面白く、もう少しその領域の最先端を自分の研究としてみたいと思ったので、大学院への進学を決めました。
──大学院時代に研究科長賞などさまざまな賞を受賞されているようですが、その後も研究し続けるという選択肢はなかったのでしょうか?
中元さん:それも考えましたね。実際、大学院時代に国際学会へ行かせていただくなど、さまざまなことを経験させていただきました。最終的に就職することに決めたのは、世の中にとってインパクトがあることをやりたい、という気持ちが学生時代からあったからでした。研究ももちろんインパクトがあることだとは思うのですが、テーマを自分の興味で選ぶので、当時はそれがとても小さいことのように思えてしまいました。「社会から見て意義があることってどういうことなのだろう?」ということにきちんと向き合えるようになりたいということから、一度就職する道を選んだという形です。ただ、研究の世界に戻る道がないと思っているわけではないので、今後社会人生活を歩む中で、「この最先端の領域で深く研究者として関わっていきたい」と思うことがあれば、そのときには大学に戻ることもあるかなと考えております。
──就職してから、修士課程を経験してよかったと思うことはありますか?
中元さん:2点あります。1点目は、論文を書くという経験を通じて成長できた点です。論文作成のなかでも、どういった問いを立てるのかというところと、それに対してどういった解き方をするのかという部分では成長できたと思います。論文を書く際には他の研究でまだ解明されていないことに取り組まなくてはいけないので、自分の新規性はどこで、どういった価値をこの研究は持っているのかというところを徹底的に考えて、それをひとつの論文として完成させます。この過程や考え方は社会人になってからも非常に役に立つので、とても良い経験だったなと思います。もちろん学部でも論文は書きますが、修士でもう一度研究をしっかりやるということが大変よかったと思っています。
2点目ですが、修士課程を経て視野が広がったという点です。私自身、学部の頃は将来何をやりたいかという考えがあまりなく、知っている世界がとても狭かったので、その頃に就職先を選んでいたら、おそらくコンサルには来ていなかったのではないかと思っています。修士の2年という期間で色々な周りの人との交流をしたことで、より社会を知ることでき、自分のやりたい道、自分の進みたい道というのを考えることができたというのが非常によかったと思っています。

──なるほど。学生時代にやっておいてよかったと思うことは何でしょうか。
中元さん:東大の色々な国際交流系のプログラムに参加したことです。たとえば1~2週間イギリスに10人くらいで滞在し、現地の赤門会(注:東京大学卒業生の会)の方の勤務先を案内していただくような体験プログラムや、香港やマサチューセッツ工科大学にそれぞれ2週間くらい滞在するようなプログラムなどに参加しました。そこで得られた国際的な経験というのは、今考えてもとても良かったと思います。社会人になってから会社をノーリスクで案内していただけることはなかなかないので、学生のうちに企業、それも海外の企業の内部を知ることができたというのは貴重な経験でした。
──そのようなプログラムがあったのですね! 他によかった経験などはありますか?
中元さん:大学院時代に半年間オーストラリアに留学したのも非常によかったかなと思っています。やはり社会人になってからだと、時間をゆっくりとって英語の勉強に充てたり外国の方と話したり、そういう機会を持つことはなかなかできないと思うので、学生時代に海外に滞在できたことはとても良い経験だったと思います。
──社会人になってからはできないことですね! 逆に、やっておけばよかったことはありますか?
中元さん:そうですね。東大の先生方がすごいということは卒業してから気づいたので、もっと色々な授業を取っておけばよかったな、という後悔はあります。あとは、色々な体験をしてさまざまな価値観を学ぶために、もっと色々な国や日本の地方に行っていれば良かったかなと思いますね。
──ありがとうございました!