戦略コンサル就活のすべて~ES、Webテストからケース面接まで選考対策を解説〜 - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜
戦略コンサル就活のすべて~ES、Webテストからケース面接まで選考対策を解説〜

東京大学や京都大学をはじめとする名門大学の学生から就職先として高い人気を誇る、戦略コンサルティングファーム。企業の戦略立案や組織改革といった経営課題に携われる刺激や高額な収入、さらにはネクストキャリアの広がりという観点からも、魅力を感じている読者の方は多いのではないでしょうか。

そのような人気の高さから、戦略コンサルへの就職は非常に狭き門となっています。さらに、ケース面接や「ジョブ」など、特殊な選考が行われるため、内定を獲得するためには入念な準備が必須です。そこで本記事では、戦略コンサルを目指す皆さんのために、選考プロセスの詳細、内定を獲得するための対策法を徹底解説します。

戦略コンサルというキャリアの魅力

戦略コンサルというキャリアの魅力

戦略コンサルは、クライアント企業が直面する経営課題を解決するプロフェッショナルファームです。競争環境が激化する現代において、企業が直面している経営課題はM&Aや新規事業開発、デジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGs対応など多岐にわたります。このような複雑、かつ最先端の経営課題に対し、クライアント企業の経営陣とともに、高い視座で取り組むことができることは、戦略コンサルの仕事の醍醐味の一つです。

また、企業の課題を一緒に解決していく中で、クライアントの経営陣や社員から喜んでもらえたり、クライアント企業が良い方向に変革していく姿を見たりする機会もあります。社会や人のために意義のある仕事をできる喜びも、戦略コンサルという仕事の大きなやりがいといえます。

さらに、戦略コンサルの経験は、経営人材としてのネクストキャリアにつながる点も魅力となっています。戦略コンサル出身者は経営幹部・幹部候補の採用を行う外資系事業会社やスタートアップ企業、PEファンドやベンチャーキャピタルなど、多くの優良企業から引く手あまたの状態です。最近では、M&A、新規事業開発などが必要となった大手日系企業にも、高いポジションで起用されています。現代の転職市場において、戦略コンサルのキャリアは、経営幹部に至る「キャリアの高速道路」といっても過言ではないでしょう。

戦略コンサルで求められる資質

戦略コンサルで求められる資質

01:問題解決能力・論理的思考能力、02:コミュニケーション能力、03:素直さ・成長力

戦略コンサルに求められる資質は、「問題解決能力・論理的思考能力」「コミュニケーション能力」「素直さ・成長力」の3つが主にあげられます。

・問題解決能力・論理的思考能力

戦略コンサルは、クライアント企業からの依頼を受け、さまざまな企業を対象に経営者視点で専門領域の問題解決を行っていきます。クライアント企業内には当然、その業界に精通しており、企業内の課題に取り組んできた社員がいるはずです。それにもかかわらず、あえて外部の組織である戦略コンサルに経営課題解決を依頼するのですから、高い問題解決能力は必須となってきます。また、難度の高い経営課題を解決するためには論理的思考力も不可欠です。もちろん、これらのスキルは研修や仕事を通じて培われていくものですので、新卒の選考時には、あくまでも「素地があるか」を判断されているといえます。

・コミュニケーション能力

コンサルタントの提案したプランを実行するのは、あくまでクライアント企業の社員です。いくらきれいな戦略を描いても、それをクライアントに正確に伝え、納得してもらい、動いてもらわないと意味がありません。そのため、ロジック面での説得力はもちろん、関係者の感情にも配慮した高度なコミュニケーション能力が、戦略コンサルには必要不可欠です。選考過程におけるやり取りの中では、分かりやすく意見を伝える能力のみならず、他人が考えていることを察する感受性や理解力も含めて、ディスカッションパートナーとしての適性を確認されるでしょう。

・素直さ・成長力

自分の意見を反対されたり、課題を指摘されたりした際に、それを素直に受け止め、行動につなげていくことができるかどうかは、コンサルタントにとって重要な資質です。幅広い業界や企業の課題解決に取り組むコンサルタントの仕事は、以前のプロジェクトで身につけた経験が、通用しないことはよくあります。自分の考えや過去の経験に固執せず、新しく教わったことを吸収し、実践してみるという素直さと成長力は、新卒入社のコンサルタントには、特に大切な資質といえるでしょう。

戦略コンサルの新卒採用スケジュール

戦略コンサルの新卒採用スケジュール

戦略コンサルの選考時期は大きく分けて夏選考と冬選考があります。しかし、通年採用を実施しているファームがあったり、春採用を行うファームもあったりと、選考スケジュールはさまざまです。

コンサルティングファームの新卒採用は、他業界と比較すると早い時期から始まります。特に戦略コンサルは早く、2年生の冬時期から対策を講じる必要があるファームもあります。以下は戦略ファーム内定者の声をもとに、ここ数年の選考時期を表にまとめたものです。近年は選考の早期化、ルートの多様化が進んでおり、変更される場合もあります。必ず最新の情報を各社の採用ページで確認してください。

主な戦略系ファームの選考時期

企業名2年生 春3年生 夏3年生 冬4年生 春複数回エントリーの可否
マッキンゼー・アンド・カンパニー 3月末~7月下旬8月上旬~12月上旬1~4月×
ボストン コンサルティング グループ(BCG)リファラル限定ルートあり4月末~9月10~1月末1~4月
ベイン・アンド・カンパニー 4月上旬~7月9~12月2~4月
A.T.カーニー 6~9月9~1月3~5月
アーサー・ディ・リトル 5月末~11月  
アクセンチュア(戦略部門)3~7月(リファラル限定ルート)6~8月  
Strategy&3~7月(リファラル限定ルート)6月以降8月以降 実質1回
ローランド・ベルガー 7~10月11~3月 実質1回
ZSアソシエイツ 
EYパルテノン  
コーポレイト ディレクション(CDI)    
ドリームインキュベータ(DI)  
経営共創基盤(IGPI)                         

※戦略ファーム内定者からのヒアリングをもとに編集部が作成

夏選考と冬選考を中心に、春にも選考を行うファームがあります。1つのファームで複数回行われる選考に対して、再応募することも通常は可能です。ただし、ファームによっては1度選考を受けると、その年度に実施される別の選考には参加できないこともあるので、注意が必要です。このようなファームへエントリーする際には、どの時期に選考を受けるか慎重に検討しましょう。

また、ファームによっては「リファラルルート」と呼ばれる選考があります。この選考ルートについては、公式にアナウンスされることはありません。一般選考とは異なる選考ルートのため、社員からの紹介や選抜コミュニティー経由で案内が届きます。一般選考で行われるプロセスの一部が免除されるというメリットがあるため、志望するファームに在籍するOB・OGの先輩たちにコンタクトを取って、確認するとよいでしょう。

戦略コンサルの新卒選考のプロセス

戦略コンサルの新卒選考のプロセス

戦略コンサルの一般的な選考プロセスは、以下の通りです。

  1. エントリーシート(ES)
  2. Webテスト
  3. グループディスカッション
  4. ケース面接+人物面接(2~4回程度)
  5. ジョブ(インターン)
  6. 最終面接

1:エントリーシート(ES)

難関として知られている戦略コンサルの選考ですが、エントリーシート(以下、ES)の通過率は比較的高いです。実際、総合商社や外資系投資銀行など他の人気業界と比べると、ESの通過率の高さが内定者へのヒアリングでわかっています。

ES通過のためのポイント

多くの日系企業で使用されているESの回答の字数制限は、400文字程度です。一方、戦略コンサルのESにおける回答の字数制限は一般的に200字程度と、かなり短くなっています。戦略コンサルのESでは、盛り込むべき内容を吟味する必要があり、短いからといって作成は決して容易ではありません。

ESを作成する際には、戦略コンサルの採用で求められる主な資質である「問題解決能力」や「コミュニケーション能力(リーダーシップ)」「素直さ・成長力」などを備えていることを伝えることが大切です。それらの適性があることを、短い文字数の中で伝えるためには、何を書き、何を捨てるのかを、よく考えてから作成しましょう。

ES内で問われることが多い「志望動機」は特に注意が必要です。コンサルティング業界に関する書籍や就活サイトの記事などで、戦略コンサルの仕事の実態をよく理解してからの作成が必須です。自己成長のためなど、自分の都合ばかりの志望動機とならないように気をつけましょう。

なお、ESで整理する適性や志望動機に関する内容は、面接でも繰り返し確認されます。そのためESの作成は、面接の対策に直結するプロセスでもあります。

参考書籍:『新版 コンサル業界大研究』コンコードエグゼクティブグループ(産学社)

ES提出の時期

戦略コンサルは選考の早期化が著しく、毎年のように選考時期が早くなっています。一部のファームは春選考を実施しており、2年生3月から試験が始まるケースもあるのです。そのため、2年生2月ごろから各ファームの採用ページをチェックして、エントリーが開始されてないか確認しておきましょう。

なお、夏選考の場合でも、マッキンゼーでは2年生の3月末からエントリーを開始していますし、BCGやベインも4月からエントリーを開始します。そのため、2年生3月には、各ファームのエントリー状況を定期的に確認しておく必要があるでしょう。冬選考を実施するファームでは、3年生の8月ごろからエントリーができるようになります。

ESの提出開始日から締切日までは1カ月程度です。エントリーが開始されたら、すぐにESの設問を確認することをお勧めします。早く取り掛かることができれば、しっかりと推敲する時間を確保できます。提出する前には、伝えたいことがクリアになっているか、文章の構造がわかりやすいか、論理展開に矛盾がないかなどを、何度もチェックしてから提出しましょう。可能であれば、先輩内定者や友人に添削してもらうと安心です。

ES設問例

・課外活動におけるリーダーシップ経験(100文字以内)

・志望理由(200文字以内)

・長期キャリア目標 ――10年程度先の将来でやりたいこと(200文字以内)

・学業以外に力を入れていたこと(趣味、スポーツ、サークル活動など)(100文字以内)

・今までの人生の中で成し遂げたことで、人に話したいことは何か(200文字以内)

・一生のうちに必ず成し遂げたい夢は何か(200文字以内)

・目標として思い描く5年後の自身の姿、およびそれを実現する過程で、戦略コンサルティングに興味を持ち志望した理由(200文字以内)

・自身の強みを生かして問題を解決し、成果を出した経験(200文字以内)

2:Webテスト

戦略コンサルティングファームのWebテストの通過率は、一般的に10~20%程度です。SPIや玉手箱の場合は、80~90%程度の正答率がボーダーであると考えられますので、しっかりと準備しておく必要があるでしょう。

ファームによって採用しているWebテストの形式は異なります。しかし、その内容はSPIや玉手箱、GMATなど、一般的なWebテストが大半です。これらのテストは、対策をすることで合格率がぐっと高くなります。志望するファームのWebテストはすべて練習しておきましょう。一部の例外として、マッキンゼーでは、2022年より自社で開発した完全オリジナルのシミュレーションゲームが実施されるようになったことが、内定者からのヒアリングで確認されています。そのため、マッキンゼーのWebテストは、市販の書籍では対策が難しくなっています。

各ファームで採用されているWebテスト形式一覧

企業名Webテストの形式備考
マッキンゼー・アンド・カンパニーオリジナルゲームシミュレーションゲーム
ボストン コンサルティング グループ(BCG)デザイン思考テスト、SPI 
ベイン・アンド・カンパニー玉手箱 
A.T.カーニー独自問題GMATと判断推理、Google Formsで提出
アーサー・ディ・リトル玉手箱 
アクセンチュア(戦略部門)玉手箱 
Strategy&TG- WEB 
ローランド・ベルガーTG-WEB 
ZSアソシエイツ独自問題GMATと簡単な数学
EYパルテノン玉手箱 
コーポレイト ディレクション(CDI)独自問題 
ドリームインキュベータ(DI)SPI 
経営共創基盤(IGPI)GPSGMATと判断推理

※戦略ファーム内定者からのヒアリングをもとに編集部が作成

Webテストの対策時期と対策方法

Webテストには、学生の性格を把握する「性格適性検査」と、計算や言語などの能力を把握するための「能力適性検査」の2種類があります。性格適性検査は、自身の性格と照らし合わせながら回答すればよいため、事前の準備はあまり必要ないでしょう。

一方で、能力適性検査には対策が欠かせません。参考書を購入し、問題を実際に解いていくことが重要です。演習問題は2~3回繰り返すことで慣れることができ、テストの本番で実力を発揮しやすくなります。

能力適性検査は、基本的には「言語」と「非言語(数理)」の問題が中心となっています。「英語」の問題を課すファームもありますので、事前にホームページなどで確認しておきましょう。Webテストの対策は、ES作成と同時期からはじめるのが一つの目安です。このくらいの時期から行うと、対策の時間を十分にとることができます。遅くとも、Webテストを受ける2週間前には対策を開始したいところです。

お薦めの対策本

Webテストの対策は、実際に手を動かして例題に取り組むことが大切です。数学の勉強と同じで、本を眺めているだけではテスト本番で歯が立ちません。また、テストの種類によって、出題傾向や対策方法が異なるので、SPI用や玉手箱用の対策本など、自分の受ける試験に合わせて購入しましょう。以下に、お薦めの書籍をあげますので、ご活用ください。

  • 『史上最強 SPI&テストセンター超実戦問題集』オフィス海著(ナツメ社)
  • 『【玉手箱・C-GAB編】これが本当のWebテストだ! (1)』SPIノートの会(講談社)
  • 『新テスト対応版 MBA留学 GMAT完全攻略』アゴス・ジャパン(アルク)
  • 『上・中級公務員 標準判断推理―確かな解答力が身につく“基本書”』田辺 勉(実務教育出版)

Webテストの対策については、下記の記事にもまとめています。

3:グループディスカッション

3:グループディスカッション

グループディスカッションとは、提示されたテーマについて数人で議論する様子をもとに適性を確認する選考です。グループディスカッションを行う主たる目的は、協働する仲間にふさわしい人物かどうかを見極める点にあります。1対1での面接では把握しづらい、集団の中での振る舞いについて確認しているのです。

グループディスカッションでは、「話す力」と同様に「聴く力」も重視されている点に注意が必要です。グループディスカッションは、ディベートとは異なります。議論で相手に打ち勝つようなコミュニケーションは評価されません。相手の話をしっかりと聴き、議論を積み重ねることができる人材が求められています。このことを理解してから臨まないと、コンサル適性が高い方であっても不合格となってしまいます。

グループディスカッションは、夏選考を実施するStrategy&やコーポレイト ディレクション(CDI)、ドリームインキュベータ(DI)などの選考プロセスで取り入れられていますので、応募する方は準備をしておく必要があります。

グループディスカッションの対策方法

グループディスカッションの対策には、自分で議題を設けて、多くの意見をあげるという練習が役立ちます。紙にそれらを書き出して、論理展開に気をつけながら、口に出して意見を言います。はじめのうちは、説得力のある意見を出すことが難しいですが、慣れてくると数多くあげられるようになってきます。この対策を繰り返すことで、本番でもあらゆる角度から新しい意見を述べることが可能となるでしょう。

グループディスカッションは夏選考で実施されることが多いため、3年生7月ごろまでに対策が必要です。そのため、ESやWebテストの対策が終わったころから、この練習を開始するとよいでしょう。可能であれば、3年生の春ごろから選考が開始されるベンチャー企業などの面接で、グループディスカッションの本番に慣れておくこともお勧めします。

グループディスカッションを成功させるポイントの一つは「前提」の確認です。議論を展開する前に、前提条件をすり合わせておきましょう。同様に、言葉の「定義」を随時確認することも大切です。議論がかみ合わず、話が発展しないとときは、出席者の間で言葉の定義がずれているというケースがよくあるのです。例えば、“老人”と一口にいっても、引退後の人生を元気に謳歌している方もいれば、病気がちで介助が必要な方もいます。どのような人をイメージしているかで、出る意見は当然、大きく変わってしまいます。議論が白熱してくると、つい見落としがちなポイントですので、留意しましょう。

さらに詳しいグループディスカッションの対策については、以下の記事をご参照ください。

4-1:面接(ケース面接)

面接(ケース面接)

ESやWebテスト、グループディスカッションの次の選考は面接です。面接は2~4回程度実施され、ケース面接と、人物面を見るビヘイビア面接(人物面接)が行われます。この段階での面接はケース面接が中心で、ビヘイビア面接は面接の最後の時間に軽く実施されることが一般的です。

ケース面接とは、特定のシチュエーションを想定して、面接官とディスカッションする形式の選考です。要領がつかめないと、コンサル適性が高い方であっても、落ちてしまうことは多々あります。

例えば「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには?」「自分がソニーのCEOだったらどうする?」といったお題を面接で出されて、皆さんは的確に答えられるでしょうか。

ケースを初めて見た方の多くは、どのように答えるべきかさえ、ピンとこないと思います。仮に、良いアイデアを思いついたとしても、論理的な説明でなければ面接官に受け入れられません。以下のような展開で失敗してしまうケースがよくみられます。

面接官「新幹線の中のコーヒーの売り上げを伸ばすには、どうすればよいと思いますか?」

応募者(コンサルタントは結論から話す……だったな)「○○をするとよいと思います」

面接官「なぜ、そう考えるのですか?」

応募者「ええっと……。それは、××だと思うからです」

面接官「なぜ、そう思うのですか?」

応募者「ええっと……。うーん」

ケース面接では、優秀なビジネスパーソンであっても、決して容易に回答できないような設問が投げかけられます。ましてやビジネス経験の浅い学生であれば、途方に暮れてしまうでしょう。

ケース面接で最も大切なこと

そもそも、この禅問答のような面接は、何のために行なわれているのでしょうか。実は、ケース面接突破の鍵は、この「ケース面接では何を見られているのか」という点を適切に理解することにあるのです。

ケース面接では「ディスカッションパートナー」としての適性が判断されています。頭の回転の速さ、ロジックツリーや3C、4Pなどのフレームワーク活用スキルばかりがみられるわけではないのです。知力のみならず、問題解決に対する姿勢や協働するマインドなどが、統合的に評価されます。ディベートのように議論で相手に勝てばいいのではなく、よく考えずに賛同する“良い人”が求められているわけでもない点に注意が必要です。

このことを理解したうえで、練習をしていくと、ケース面接の通過確率が飛躍的に高まるでしょう。

ケース面接 3つのタイプ

ケース面接のテーマは多岐にわたりますが、3つのタイプに分類することができます。

まず1つ目は、「フェルミ推定」と呼ばれるタイプです。フェルミ推定は、市場規模や店舗数などの数値を、知識からではなく論理的に推定する設問です。例えば「中古携帯電話の市場規模を推定せよ」や「日本国内のハンバーガーショップの店舗数を推定せよ」といったテーマが出題されます。実際にこれらの数字を知っている必要は一切ありません。日本や世界の人口や平均寿命など、常識的な数値をベースとしつつ、推定することが求められています。前提の確認など押さえるべきことがありますが、後述する対策本などをもとに練習を行えば、すぐに対応できるようになるでしょう。なお、市場規模を求めるケースと、店舗数などを求めるケースでは、解法が若干異なります。両パターンをしっかりマスターしておきましょう。

2つ目は、「ビジネス系ケース」です。ビジネス系ケースは、実際のコンサルティングファームが取り組む課題に近く、企業が抱える課題を解決する問題です。例えば「新宿駅近くにあるスターバックス1店舗の売り上げを増やすには」「新潟県にあるスキー場の売り上げを増やすには」「〇〇社の社長だったら何をする」といったような出題がなされます。3Cや4Pといったベーシックなフレームワークを活用しながら、論理展開をしていくとよいでしょう。これらのフームワークを自然な流れで使いこなすためには、慣れが必要です。対策本をもとに何度も繰り返し練習をしましょう。

そして3つ目は、「公共の課題」に関する設問です。例えば「日本の犯罪を減らすには」や「次のオリンピックで日本のメダル獲得数を増やすには」といった設問です。一般的には、ビジネス系ケース問題に比べて出題頻度はやや低くなりますが、BCGやA.T.カーニーなどのファームではよく見受けられます。志望するファームの傾向をつかんで、対策を進めるとよいでしょう。

ケース面接は対策がカギを握ります。詳細については下記の記事をご覧下さい。

ケース面接の対策時期と対策方法

ケース面接対策は一朝一夕でできるものではありません。夏選考が本格化する3年生4月より前、可能であれば2年生の冬あたりからコツコツと演習を積み重ねることをお勧めします。面接は面接官との双方向的なコミュニケーションであるため、自分で解答を作るだけではなく、友人や内定者の先輩などに面接官役になってもらい、“壁打ち”して対策することも有用でしょう。

また、ホームページ内で具体的な対策方法や意識すべき点を紹介しているファームもあります。BCGのホームページには、面接のプロセスと面接の際のTIPSも公開されています(BCGホームページ「面接準備と模擬ケース」)。各ファームの選考を受ける前に、ホームページを確認し、そこで言及されている内容をよく把握しておきましょう。

マッキンゼー
https://www.mckinsey.com/careers/interviewing

BCG
https://www.bcg.com/ja-jp/careers/roles/consulting/interview-resources

ベイン
https://www.bain.com/ja/careers/prepare-for-an-interview/case-interview/

お薦めの対策本

ケース対策は、下記のような書籍を精読し、実際の面接を想定しながら繰り返し練習することが大切です。

・『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』東大ケーススタディ研究会

(東洋経済新報社)

・『東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート』東大ケーススタディ研究会

(東洋経済新報社)

・『過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題』大石哲之(東洋経済新報社) 

さらに詳しい対策法については、以下の記事を確認ください。

4-2:面接(ビヘイビア面接/人物面接)

面接(ビヘイビア面接/人物面接)

ファームによっては、ケース面接に付随して、ビヘイビア面接(人物面接)が実施される場合もあります。ビヘイビア面接とは、ESや履歴書をもとに、候補者の価値観や人間性、適性、仕事やファームへの志望動機などを見極めるための一般的な面接です。戦略コンサルの面接というと、ケース面接の対策に目がいきがちかもしれません。しかし、実際にはビヘイビア面接も非常に重要です。人物面接において「この人と一緒に働きたい」と思わせることができなければ、ケース面接を乗り越えたとしても、内定獲得は難しいでしょう。

ビヘイビア面接でよく聞かれる質問例

  • 自己PR・適性確認|学生時代に力を入れて取り組んでいたこと、自分の強みは何か、苦労した経験はなにか
  • 志望動機|なぜ戦略コンサルか、なぜこのコンサルティングファームなのか
  • 志望動機の深掘り|コンサルタントとしてどのようなプロジェクトに関わりたいか、また、どのような仕事をしたいか、将来やりたいことは何か、人生のターニングポイントは何か
  • 質問事項|(面接の終盤で)何か質問したいことはあるか

ビヘイビア面接における主な内容は、志望理由と自己PRです。シンプルな論点ながら、仕事への情熱、自己管理能力、リーダーシップ、他者への思いやり、成長意欲など、協働する仲間にふさわしい人物か否かが、さまざまな角度からチェックされます。

自身が伝えたいと思っている資質を軸にし、志望動機を意識して臨むことが鍵となります。あらゆる方向から飛んでくる質問に対して、一貫した受け答えを心がけてください。例えば、学生時代に力を入れて取り組んだことについて話す場合、一番時間を割いたことを単に話せばよいわけではありません。どのような資質をアピールしようとしているのかという目的から逆算して、エピソードを整理しておくことが必要です。

志望動機を話す際、あまりに壮大な夢だけを伝えると「目の前の仕事にしっかり打ち込んでくれる人物なのだろうか?」と不安に思われてしまいます。「自分の思いを伝えることが大切だ」と主張する書籍や記事も見受けられますが、そればかりとは言い切れません。自分の想いを伝えることはもちろん大切ですが、ビジネススキルを持たない新卒学生を粘り強く育ててくれる採用企業の気持ちをよく考えることも重要です。採用企業にとって納得感のあるロジックで、ストーリーを組み立てましょう。当然のことですが、相手の気持ちや立場を考えられない人が、採用企業から高い評価を受けることはないのです。

また、自分の話し方や表情やしぐさが、受け手に与えるインパクトを意識し、ネガティブな印象を与えてしまうクセが出ないようにしておくことも大切です。自分では気づきにくいことですので、友人や先輩、あるいはインターン先の上司からフィードバックをもらうことも役立つでしょう。あわせて、自分の面接練習の様子を録画して確認することも効果的です。「リアクションが薄くて、相手が話しづらそうだな」「あいづちの打ち方がぶっきらぼうで、失礼な印象があるな」など、修正ポイントを把握して、面接に活かしましょう。

これは「他人の目を気にして、それに合わせる」という発想とは、まったく異なります。戦略コンサルに限らず、仕事とは自分の能力やスキルを活用して、他者へ貢献することで、人々を幸せにしたり、社会をより良くしたりしていく活動です。他者への貢献が仕事の鍵となるならば、自分の行動やふるまいが、他者に与えるインパクトについて配慮するのは、当たり前のことといえるでしょう。コミュニケーションのあり方や人との関わり方を見直して、自分が望む姿に近づくことは、人生を豊かにします。就職活動は、そのための好機でもあります。

もちろん、面接で身の丈以上にアピールしても、ベテランの面接官からは見抜かれてしまいますし、仮に入社できたとしても、将来的には互いにとって不幸な結果となる場合もあるでしょう。あくまで、自分の資質や志望動機を“聞き手の気持ちをくみながら”“誤解のないように“わかりやすく”伝えるということが大事なのです。

5:ジョブ

ジョブ

戦略コンサルの選考過程では、ジョブが実施されることが一般的です。2023年時点では、マッキンゼー以外のほとんどの戦略コンサルで実施されています。

ジョブの内容は、短期インターンのような学生向けの就業体験プログラムに近いですが、選考である点を忘れてはいけません。ジョブでは、戦略コンサルのプロジェクトに近い、企業の経営課題に関するテーマが出されます。この課題に対し、2~4日にわたって提案を作成するのが通常の内容です。個人ワークに取り組むA.T.カーニーのようなファームもありますが、基本的には3~5人のチームで取り組む形式になります。

ジョブは、学生が実際のコンサルティング業務に近い体験をできる絶好の機会となっているのと同時に、参加者にコンサル適性があるのかを判断をするのに適した選考プロセスとなっています。チームで取り組むジョブ選考では、個の能力だけでなく、チームワークも選考のポイントとなるのです。選考は数日にわたるため、ストレスもかかり、疲労もたまるでしょう。そのような環境下における、協働するスタンスや粘り強く考える知的体力も評価対象です。

ジョブの期間中には社員との懇親会の機会も設けられます。ファームの雰囲気やどんな社員がいるのかを知る良い機会にもなるでしょう。

ジョブ選考の対策時期と対策方法

ジョブには、ケース面接の対策がおおいにいきます。ケース面接の対策を通して習得した論理的思考力や問題解決能力によって、チームのメンバーと活発にディスカッションをしながら進めていきましょう。

チームで問題に取り組む練習として、友人と模擬ジョブを行うことも一つの手です。1人で戦略コンサルのジョブの過去問題に取り組むだけではなく、数人で集まって1~2日間かけて実践形式の模擬ジョブに取り組むと、より早くコツをつかめるようになるでしょう。また、2年生の冬からはじまるベンチャー企業の短期インターンに参加するのもお勧めです。

ジョブの設問例

例えば、下記のような設問が出題されています。

・海外の飲食店チェーンが日本へ進出する時に、最初に参入するべき都市と、その都市での展開戦略について考えよ。選択した都市での展開後、日本でのサービス拡大戦略まで言及すること。

・国内大手ヘルスケアメーカーが事業拡大のために買収するとしたら、次の3社のうちどの企業がよいか。買収後の経営戦略にも言及しつつ意見をまとめよ。

買収候補企業:大手 システムインテグレーター(SIer)企業、全国展開ドラッグストアチェーン、全国展開飲食店チェーン

・大手IT企業のAI分野における新規事業の立案をせよ。

6:最終面接

最終面接

ケース面接やジョブという難関選考の後には、最終面接があります。通常、最終面接までに応募学生のコンサル適性は確認されています。最終面接で、企業が重視している点は、志望度の高さにあります。採用企業の視点に立てば当然のことですが、熱意ある学生にジョインしてもらいたいと考えています。そのため、最終面接では、企業への理解をさらに深めて、志望度の高さや情熱を示すことが鍵を握ります。ファームによっては、カルチャーフィットを確かめるため、最終面接でビヘイビア面接を実施することもあります。

最終面接対策の時期と方法

最終面接の案内は、前選考から数日~2週間ほどで届くことが一般的です。最終面接では、多くの企業で実施される面接のように、志望動機を問われ、入社に対する熱意を確認されます。最終面接の前には、ES回答時にまとめた志望理由を再度確認しておくことも大切です。また、ジョブや面接で感じた、その企業の魅力を整理しておくのもよいでしょう。なぜコンサルタントになりたいのか、その中でもなぜこのファームなのかといった、志望度の高さを確かめられる質問への回答を入念に準備しておきましょう。

最後に~合否の結果にとらわれすぎない

最後に~合否の結果にとらわれすぎない

最後に読者の皆さんにお伝えしたい大切なことがあります。それは、「就活の合否結果にとらわれすぎない」ようにしていただきたいということです。仮に第1志望や第2希望のファームで不合格となってしまったとしても、落ち込みすぎないようにしてください。

戦略コンサルであれば、一つ一つのファームの採用枠は非常に狭いため、「A社に合格したい」と思っていても、その1社で確実に内定を勝ち取るということはかなり難しくなります。倍率が高いというだけでなく、しっかり準備をしていたとしても、面接官との相性など運の要素も多分にあるのです。

しかし、コンサルティング業界を広くみれば、たくさんの会社が存在します。外資系戦略ファーム以外でも、日系戦略ファーム、総合系ファームの戦略コンサル部門、大手シンクタンクの戦略コンサル部門などは経験できる業務も身に付くスキルも、大きな差はありません。広い視野で捉えれば、A社にこだわらずとも、B社やC社でも、素晴らしいキャリアが待っていることに気がつくはずです。

また当然ですが、会社に入ることが人生のゴールではありません。会社に入ることは、自分のキャリアビジョンを実現するためのプロセスにすぎません。そして、そのキャリアビジョンに至る道は無数ともいえるほどあるのです。第1希望や第2希望のファームに入れなくても、長い目で見れば、人生に大きな影響はないでしょう。

もちろん、第1志望の企業から内定を得られたとすれば、それはとても喜ばしいことです。しかし、社会人として何かを成し遂げたわけではなく、ようやくスタートラインに立っただけ。これからが本番です。よりよい社会人のスタートを切れるように、卒業までの時間を大切に過ごし、社会に出る準備をしましょう。

就職活動は、社会人としての成長の好機と捉えていただき、結果にとらわれすぎず、学びのプロセスを大切にしていただけると幸いです。

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