理系学生の進路選択に実態:大学院進学と就職の比較と準備のポイント - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

東大をはじめ、多くの大学で理系の学生はその大半が大学院に進学します。一方で理系の学生の中には大学院には進学せずに、学部4年で卒業しそのまま就職するという進路を取る人も一定数存在することは事実です。しかし決して一般的とは言えない進路であるがゆえに、情報が少ないだけではなく周囲の仲間ともスケジュール感が異なるため、自分自身で綿密に準備をし就活に臨まなくてはなりません。

この記事は理系に在籍している学生の方に向けたものです。

院進せず学部四年で卒業し就職しようと考えている方には、学内における全体像やスケジュール感を掴みクリアなイメージを掴んでいただくための情報を提供することを目指します。一方で周囲の仲間に流されてなんとなく院進するつもりの方にも、自分自身の進路を相対化して見つめなおすきっかけを提供することを目指します。

理系学部生の一般的な進路

まずは東大の理系学部生が一般的にどのような進路をとるのか、現状の確認をしたいと思います。

皆さんは理系大学生の進路について、どのようなイメージを持っているでしょうか?

恐らく、文系は学部4年で卒業し就職するのに対して、理系は大半が大学院に進学するという見方が一般的かと思いますが、実際のところこの傾向はどの程度あるのでしょうか。

理系は約七割が大学院に進学

東京大学が公表している資料『東京大学の概要(資料編)』(2021年版)の「学部卒業者の卒業後の状況」の章には、どの学部から何名の学生が卒業し、何名が進学、就職したのかを一覧で示した表が掲載されています。このデータをもとに大学院進学率を計算したところ、以下のような結果となりました。

文系:1418名中、316名が進学。約22%

理系:1739名中、1127名が進学。約65%

但し、医学部医学科は大多数の人が臨床研修医になるため大学院に進学する人はほとんどいません。医学部を除いた場合、全体の進学率は約69%となります。

理系学部の中では特に人数の多い工学部と、次に多い理学部に注目した結果は以下の通りです。

工学部:961名中、648名が進学。約67%

理学部:306名中、258名が進学。約84%

参考

卒業者全体進学者進学率
法学部41977約18%
文学部34586約25%
経済学部33834約10%
教養学部20993約44%
教育学部10726約24%
医学部(医学科)1152※大半が臨床研修医
医学部(健康総合科学科)3115約48%
工学部961648約67%
理学部306258約84%
農学部214128約60%
農・獣医学部232約9%
薬学部8072約90%
薬学6年制92約22%
合計31571443約46%

やはり皆さんご察しの通り、文系と理系とでは進学率に大きな差があることが分かります。進学しないということは、ほとんどの場合はそのまま就職するということになりますので、文系はおよそ8割の学生が就職し、一方で理系はおよそ3割の学生が就職するということになります。

しかし理系は進学率が高いとはいえ、学部によっては大きな差があるというのも事実です。およそ9割の学生が進学する学部もあれば、半分程度しか進学しない学部も存在しています。

学部1,2年生の方々にとっては、進学先を選ぶ際の判断材料の一つとしてこれらのデータを知っておくことは良いかもしれません。もちろん、個々人それぞれが学びたいこと、興味のあることを軸に選ぶに越したことはありません。しかし例えば学部卒業後に就職を考えている人にとっては学生の大半が大学院に進学する学部を選択した場合、就活マイノリティになってしまうため、より計画的に情報集めや仲間集めをしようという意識を持った方が良いかもしれません。

全国の大学院進学率

ここまでは東京大学のデータを用いて説明してきましたが、全国における大学院進学率も参考までに紹介したいと思います。

大学院進学率に関して、所謂高学歴な大学であるほど進学率が高くなるという全体的な傾向があり、そのため先ほど紹介した東大のデータは世間一般と比べて高めになっています。

では実際どれほどの違いがあるのか、国が公表している統計データをもとに見ていきましょう。

こちらのグラフは学校基本統計を基に作成されたものです。全国の学部卒業者の大学院進学率はおよそ1割程度で推移しており、およそ10人に一人程度が大学院に進学していることが分かります。

全国の文系の大学院進学率は5%弱、理系は25%~45%程度となっていることからも、いずれの場合も東京大学では進学率が比較的高く、文系ではおおよそ2~3倍、理系では2倍程度となっていることが分かります。

理系学部卒業後に就職するの人の属性

東京大学においては、理系の大半が大学院に進学するという現状についてご説明してきました。全国的には就職する方が割合としては多いわけですが、東京大学の場合その割合はほぼ逆転しており、少数派と言っても良い状況となっています。

ここでは、実際に東京大学の理系学部卒業後に大学院に進学せず就職する人の属性について、説明したいと思います。

理系学部卒業生の就職先

理系学部卒業後に大学院に進学しなかった人はどこに就職しているのでしょうか。

ここでは、東京大学が公表しているデータを基に文系学部卒業者の就職先や修士課程修了者の就職先と比較しつつ、理系学部卒業生の就職先の傾向を見ていきたいと思います。

理系学部卒業者の就職先

まずは理系学部卒業者の就職先について、東京大学が公表している令和二年度のデータから作成した以下の円グラフをもとにその傾向を見ていきたいと思います。

※この年の理系学部卒業者の内、就職した者の人数は219名と文系の就職者のおよそ4分の1でした。

<分類一覧>
A 農業、林業
B漁業
C鉱業、採石業、砂利採取業
D建設業
E製造業
F電気・ガス・熱供給・水道業
G情報通信業
H運輸業、郵便業
I卸売業・小売業
J金融業・保険業
K不動産業・物品賃貸業
L学術研究、専門・技術サービス業
M宿泊業、飲食サービス業
N生活関連サービス業、娯楽
O教育・学習支援業
P医療・福祉
Q複合サービス事業
Rサービス業
S公務
その他の企業等

上の円グラフからも分かる通り、理系学部卒業者の就職先として最も多いのが「情報通信産業」で全体の17.4%を占めています。次に多いのが「金融業・保険業」で全体の11.9%、その次が「医療・福祉」で全体の9.6%を占めています。

学部卒業者の就職先比較

まずは学部卒業生の就職先を文系と理系で比較したいと思います。以下の円グラフは東京大学の令和二年度における文系、理系それぞれの学部卒業者の就職先を分野別にまとめたものになります。

文系学部卒業者の就職先の傾向としては、最も多いのが「金融業・保険業」で全体の19.2%を占めています。次に多いのが「情報通信産業」で全体の12.5%、その次が「サービス業」で全体の11%を占めています。

たとえば「金融業・保険業」ならゴールドマンサックスやモルガンスタンレーといった外資系投資銀行、「情報通産業」ならソフトバンクやヤフーといったIT企業やベンチャーIT企業、「サービス業」ならマッキンゼー・アンド・カンパニーや楽天グループといったコンサルティング会社等が当てはまります。

これらのグラフから分かる文系と理系の傾向としては、

  • 理系と言えば「情報通信産業」、文系と言えば「金融業・保険業」という構造が見られるが、いずれの分野も文理に関わらず人気の業界である。
  • 理系では「医療・福祉」の分野が第3位であったが、文系では当該分野への就職者は全体の0.5%であり、文理で大きな差がみられる。

といったことが挙げられます。

理系学部卒業者と理系大学院卒業者の就職先比較

次に、同じ理系の中でも学部卒業者と大学院卒業者で分けてそれぞれの就職先を比較したいと思います。

理系大学院卒業者の就職先の傾向としては、最も多いのが「製造業」で全体の27.1%を占めています。次に多いのが「情報通信産業」で全体の16.2%、その次に多いのが「学術研究、専門・技術サービス業」で全体の14.3%を占めています。

これらのグラフから分かる理系学部卒業者と理系大学院卒業者の傾向としては、

  • 学部卒業者と比較して大学院卒業者の就職先は大きく偏っている。
  • 特に大学院卒業者の就職先は「製造業」「情報通信産業」「学術研究、専門・技術サービス業」に集中し、これら3つの分野だけで全体の6割程に達する。
  • 学部卒業者、大学院卒業者、いずれの場合も「情報通信産業」が人気業界である。
  • 学部卒業者のグラフで人気だった「金融業・保険業」は、大学院卒業者のグラフではそうでもない。

といったことが挙げられます。

先ほどの文系学部卒業者との比較からも分かる通り、理系大学院卒業者は全体として「理系としての強み」を活かした分野への就職が多くなるという傾向が見られるといっても良いでしょう。

文系大学院卒業者と理系大学院卒業者の就職先比較

ここまで、理系学部卒業者の就職先の傾向を見るために様々なデータを用いて比較してきました。ここでは余談として、同じ大学院卒業者のなかでも文系と理系で就職先の分布にどのような違いがあるのかを紹介したいと思います。

文系大学院卒業者の就職先の傾向としては、最も多いのが「学術研究、専門・技術サービス業」で全体の18.3%を占めています。次に多いのが「教育・学習支援業」で全体の14.7%、その次に多いのが「情報通信産業」で全体の14.5%を占めています。また、「公務」が全体の10.9%、「製造業」と「金融業・保険業」がいずれも全体の9.1%を占めています。

これらのグラフから分かる文系大学院卒業者と理系大学院卒業者の傾向としては、

  • 文理に関わらず「情報通信産業」と「学術研究、専門・技術サービス業」は人気の業界である。
  • 文系では「教育・学習支援業」が多く、理系では「製造業」が多いという点が大きな違いである。

といったことが挙げられます。

文系においても大学院卒業者の就職先が特定の業界に集まる傾向がみられるという点においては理系と同様であることが分かります。また、文系学部卒業者と比較した場合、学部卒業者で人気だった「サービス業」は大学院卒業者にはそれほど人気ではないといった違いも見ることができます。

理系学部生の就活スケジュール

ここでは、理系学部卒業生向けにの就活スケジュールを紹介させていただきます。

理系の学部生にとっては3,4年と研究活動が忙しくなるなかで就活を並行して進めなくてはならず、一般的に文系の就活と比べると大変さが増します。

理系学部生の就活スケジュールの全体像を把握することで、いつどのタイミングで負担が増すかといった時期的な感覚を掴み、より効率的に準備を進めるためのきっかけにしてほしいと思います。

ここで紹介するのは一般的なスケジュールですので、人によっては予定が大きく前後する可能性は十分にあります。いずれにせよ、皆さんご自身で個々の予定を深く考慮し、戦略的に就活に臨んでいただければと思います。

自由応募、専門分野以外への就職

自由応募や専門分野以外への就職の場合、一般的な就活スケジュールに沿って進めることになります。学会発表や卒業研究で忙しくなる時期を考慮して、戦略的にスケジュールを組むことが望ましいと思います。

時期イベント
B3・4月~夏期インターンシップの情報が公開
B3・7月~前期試験夏期インターンシップ開始
B3・11月~冬期インターンシップの情報が公開
B3・1月~後期試験研究室選び冬期インターンシップ開始
B3・3月~企業説明会開始、ES提出開始
B4・4月~卒業研究開始採用選考が本格的に開始
B4・6月~内々定が出される
B4・7月~大学院入試
B4・10月~内定式
B4・11月~卒業論文提出
B4・3月~卒業、入社

専門分野への推薦応募

大学で研究している専門分野への推薦応募の場合、研究室での研究内容と直接つながりのある企業への推薦となります。推薦応募を目指す方は、研究室を選ぶタイミングで、就職先までを考慮しておくことが望ましいと思います。

時期イベント
B3・12月~推薦応募関連の説明会開始
B3・1月~後期試験研究室選び推薦応募の受付開始
B3・3月~推薦の選考開始
B4・4月~卒業研究開始
B4・10月~内定式
B4・11月~卒業論文提出
B4・3月~卒業、入社

おわりに

この記事は、主に理系学部に所属し大学院には進学せず就職しようと考えている学生のみなさんに向けて作成しました。理系学部卒業後に就職するという情報が不足しがちなルートをたどる方々にとって、少しでも助けになれたら幸いです。

なるべく全体的な傾向や流れを知っていただけるような内容にしましたが、実際に就活に臨むにあたってはこの記事では扱いきれていないことも多々あるかと思います。個々の企業に合わせた対策も必要でしょうし、研究室によってはスケジュールや負担が大きく異なるかもしれません。

この記事を通してまずは理系学部卒の就活の全体像を掴み、ご自身に合わせたプランを立てるためのきっかけとしていただけると嬉しいです。

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