【3分でわかる】キーエンス - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

企業説明

株式会社キーエンス(以下、キーエンス)はセンサーや測定器などをつくる世界的なメーカーですが、それより有名なのは年収の高さではないでしょうか。

キーエンスの社員の年収は40歳前に2,000万円を超え、これは5大商社の40代で1,500万円という水準をはるかに上回ります。しかもキーエンスは時価総額(=株価×発行済株式数)でも国内トップ3に入ります。

こうした事実を知ると「なぜセンサーや測定器の製造販売でこれほど儲かるのか」と感じるのではないでしょうか。そして「キーエンスは何をしているのか」と不思議に思うはず。その謎に迫ってみます。
記事中のデータは2022年11月現在のものです。

キーエンスの会社概要・活動内容

キーエンスがつくっている製品は、センサー、測定器、画像処理機器、制御機器、計測機器、研究・開発用解析機器、ビジネス情報機器などです。これらの1つひとつは珍しいものではなく、類似製品は他メーカーもつくっています。

しかしキーエンスは「ファクトリー・オートメーション総合メーカー」を名乗っています(*6)。つまりキーエンスは、顧客企業の工場の自動化をサポートする機器をつくっている会社です。キーエンスのセンサーや測定器や画像処理機器などは、顧客企業の工場を最先端のモノづくり現場にするためのものなのです。

そしてキーエンスは単なる「メーカー」でも「機器つくっている会社」でもなく、自社工場を持たないファブレス・メーカーです。

会社概要
キーエンスの会社概要は以下のとおり。

  • 本社住所:大阪市東淀川区東中島1-3-14
  • 代表取締役社長:中田有
  • 設立:1974年
  • 資本金:約306億円
  • 従業員数:連結で8,961人
  • 東証プライム市場に上場
  • 連結売上高:7,552億円(2021年度)
  • 連結当期純利益:3,034億円(同上)
  • 大株主(多い順):株式会社ティ・ティ(15.07%)、日本マスタートラスト信託銀行(12.92%)、日本カストディ銀行(8.27%)、公益財団法人キーエンス財団(4.57%)、JP MORGAN CHASE BANK(3.26%)、滝崎武光(3.15%)

キーエンスは兵庫県尼崎市で創業しましたが、すぐに大阪市に移転しています。
社長の中田有氏は1974年生まれなので40代社長です。中田氏は関西学院大学法学部を卒業してキーエンスに入社してトップに上り詰めた、生え抜き社長でもあります。
大株主に名を連ねる滝崎武光氏は創業者で、現在はキーエンスの名誉会長に就任しています。
滝崎氏は経済誌のインタビューで「権限を委譲して考え方を伝えて現場と一緒に考えないとよいアイデアは生まれない。創業当時から自分がいなくても会社が回るようにずっと考えてきた」と話していて、このことからキーエンスが実力重視の会社であることがわかります。
なお筆頭株主の株式会社ティ・ティは、滝崎氏に関連した資産管理会社です。

ファブレス・メーカーとは
ファブレス・メーカーとは、研究、開発、設計を自社で行い、製造は工場を持つ他社に委託する会社のことです。iPhoneのアップル社もファブレス体制を敷いています。
キーエンスは、自社製品の製造を委託している会社の名称や工場の場所は公表しておらず、「製造は国内と海外の協力会社にアウトソース(外注)している」とのみ説明しています。
ただキーエンスは「つくらせっぱなし」にしているわけではなく、自社の品質管理部門が協力会社の工場に入り生産に深く関与しています。
ファブレス体制はキーエンスの「儲けの源泉」になっています。
自社工場だと、つくる製品が変われば製造ラインも変えなければならず多額のコストがかかります。しかしファブレスなら製品にマッチした工場を選択すればよく製造ラインを変更するコストを負担せず新製品をつくることができます。
もちろんその代わりに、キーエンスは協力会社に対し、製造の「手間賃」を支払うことになりますが、それでももう1つのメリットがあるのでコストを十分吸収できます。
もう1つのメリットとは、生産体制を意識した研究開発をしなくて済むことです。
自社工場を持っていると、開発者はどうしても自社工場でつくれるものを開発しようとしてしまうでしょう。それではイノベーティブな製品をつくることができません。
ファブレス体制なら、市場競争力があるイノベーティブな製品を開発してから生産工場を探せばよいわけです。キーエンスは「世界情勢や市場の変化に左右されず、付加価値の高い商品を大量生産するには、このファブレスという発想が不可欠です」と言い切っています。

ダイレクトセールスとは
キーエンスのもう1つの「儲けの源泉」はダイレクトセールスです。キーエンスでは自社製品を、自社の営業担当者が直接顧客企業に販売しています。問屋や代理店を介さず販売するので中間マージンが発生しません。この販売スタイルは海外でも貫いています。
ダイレクトセールスにももう1つのメリットがあり、それは営業担当者が顧客企業の課題を聞き取ることができることです。その情報は開発担当者に伝えられ、新しい製品をつくるヒントになります。そのためキーエンスの営業担当者は、顧客企業の生産現場にまで足を運びます。

キーエンスの製品の強み
キーエンスの製品は次のとおり。

・センサー・判別変位センサー・変位計・寸法測定器・安全機器・画像処理システム・画像センサー・投影機・測定顕微鏡・画像寸法測定器・PLC/モータ・マイクロスコープ・測定機・三次元測定機・3Dスキャナ・タッチパネル・データロガー・記録計・粗さ計・形状測定機・顕微鏡/SEM・ハンディターミナル・レーザマーカ・産業用インクジェット・流量センサー・圧力センサー・レベルセンサー・バーコードリーダ・3Dプリンタ・イオナイザ・静電気対策機器・元素分析・業務自動化ソフトウェアなど

これらはモノづくり企業が使う製品という共通点があります。そしていずれも、モノづくり企業が高付加価値、高性能、高機能の製品をつくるときに必要な機器です。
キーエンス製品の7割は世界初または業界初であるといいます。
キーエンスは、高付加価値製品をつくるメーカーを支える高付加価値機器メーカーといえるでしょう。

キーエンスの特徴や価値観

キーエンスの事業は独特なので「この業界に属している」と特定することは簡単ではありません。
そこで、キーエンスがファクトリー・オートメーション総合メーカーであり、センサーなどの機器メーカーであることから、ファクトリー・オートメーション・システム業界の東芝三菱電機産業システム株式会社(以下、東芝三菱電機)と、センサー業界の双葉電子工業株式会社(以下、双葉電子)と比較してみましょう。

キーエンス企業分析表 東芝三菱電機産業システム 双葉電子工業 比較

このように並べると、キーエンスの企業規模と事業規模の大きさが際立ちます。従業員数は、東芝三菱電機(2,641人)と双葉電子(4,006人)を足してもキーエンス(8,961人)の7割ほどにしかなりません。
売上高は、前2社を足しても2,401億円(=1,866億円+535億円)で、キーエンスの7,552億円の3割ほどです。そして利益は比較するレベルを超えています。

ただこれは無理からぬことで、キーエンスの時価総額は14兆円で、トヨタ自動車の36兆円とソニーグループの16兆円に次ぐ国内3位になります。
したがってキーエンスの「同業他社と異なる特徴」は、企業規模がとにかく大きいこと、となるでしょう。

キーエンスの最近の動向

キーエンスの強みとして、ファブレス体制とダイレクトセールスを紹介しましたが、もちろんノウハウはこの2つ以外にもあります。これらを一言でまとめると、キーエンス・イズムとなるでしょう。

2022年2月に滝崎名誉会長が経済紙のインタビューに答える形で、キーエンス・イズムの正体を明かしています。

どの企業も自社製品や自社サービスに付加価値をつけようとしていますが、キーエンスは顧客が求める前に必要な付加価値をみつけて製品に盛り込むようにしています。滝崎氏は次のように述べています。
「付加価値の高い商品をつくることを追求してきましたが、カタログだけでは当社の商品のよさはわかってもらえない。商社に頼んでも開発者の意図を正確に顧客に伝えられないでしょう。我々の営業担当者は本当によく勉強しますよ。商品発売の1カ月前くらいから、技術者が講師になり何度も勉強会を開きます」

この言葉から、キーエンスがコスト安になるファブレス体制を採用しながらコスト高になるダイレクトセールスを続けるのは、付加価値を最大にして、最大にした付加価値を顧客に正確に伝えるためであることがわかります。

そして滝崎氏は「キーエンスに過去は不要」と断言します。なぜならキーエンスにとっての付加価値の源泉が技術とサイエンスにあるからです。技術とサイエンスは時間の経過とともに陳腐化し、そして時間の経過とともに進化します。常に新しい技術とサイエンスを持つために、過去を断ち切るわけです。
過去の栄冠を捨てて、新しいことに物怖じせず挑戦することは簡単なことではないはずですが、キーエンスはそれを実践しています。

キーエンスでの働き方・キャリア

キーエンスの働き方を紹介します。
キーエンスの社員の平均年齢は36.1歳で、平均勤続年数は12.5年、平均年間給与は21,827,204円です。いわゆる給料のよい企業でも40代で年収1,000万円が1つの目安になりますが、キーエンスの給与はその2倍以上というレベルです。
ただし高給に見合う厳しさがあります。

社内の雰囲気は厳格で、白色のワイシャツの着用が求められ、顧客との接待飲み会は禁止され、菓子やコーヒーを社内に持ち込むこともできません。
接待の飲みを禁止しているのは、アルコールの力を借りて顧客を口説くのが邪道だからです。したがってキーエンスの開発陣は、接待がなくても顧客から選ばれる製品をつくり続けなければなりません。
菓子とコーヒーを禁じるのは、こぼしやすく仕事に支障が出るからです。仕事に関係しない私語もしにくい雰囲気があるといいます。

ではキーエンスはブラック企業なのかというともちろんそうではありません。キーエンスはパワハラ防止に力を入れていて、上司が部下に「飲みに行くぞ」と誘うのは許されていません。逆に部下が上司を飲みに誘うのは問題ありません。
キーエンスの社員に求められることは結果を出すことではなく、最短距離で結果を出すことのようです。

まとめ~顧客目線でやることをやるのみ

キーエンスがなぜ強いのか。この答えは2つあると思います。
顧客が価値を認める製品をつくっているから、が1つ目の答えで、2つ目の答えは、やることをやっているから、でしょう。

工場は、開発者が描いた設計図とおりのものをつくる場所なのに、多くのメーカーは月日の経過とともに工場でつくれるものをつくるようになってしまいます。これは進化を停滞させる要素であり、キーエンスはこれをファブレス体制によって除去しています。

営業の仕事を苦手にする人は少なくありませんが、それは、あまり喜ばれないものを売らなければならないからでしょう。顧客が欲しくて欲しくてたまらない製品を売るのであれば、営業するだけ喜ばれるので楽しい仕事になるはずです。キーエンスの営業パーソンたちは、顧客自身が意識していなかったニーズを先取りして、それを開発担当者に伝えて斬新な製品をつくっています。顧客がそれを欲しがらないわけがなく、つまり売れるわけです。

キーエンスが採用しているのは、顧客目線に立てば当然に用いるはずの手法なのです。

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企業情報

企業名 キーエンス
設立日 1974年5月27日
代表者 代表取締役社長 中田 有
本社住所 〒533-0033 大阪府大阪市東淀川区東中島1丁目3−14
従業員数 8,961名(2022年3月現在)
資本金 306億3,754万円