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企業説明

株式会社日立製作所(以下、日立製作所)の公式サイトのグループ会社一覧のページをみると、「日立化成」の名称がありません。日立グループは大規模再編に着手し、それは日立御三家と呼ばれた名門企業の売却も含むものでした。

日立グループの今がどのような状態になっていて、今何を目指しているのか探っていきます。

記事中のデータは2022年12月現在のものです。

日立製作所の会社概要・活動内容

今の日立グループを象徴するのは、御三家の影響力の低下です。御三家とは、日立化成、日立金属、日立電線のこと。日立化成工業株式会社は名称を日立化成株式会社(以下、日立化成)に変え、日立製作所はその後、日立化成の株式を昭和電工株式会社に売却。日立化成は社名を昭和電工マテリアルズ株式会社に変えたことで、「日立化成」の名称が消えました。日立金属工業株式会社は日立電線株式会社と合併し、今は日立金属株式会社(以下、日立金属)を名乗っています。日立製作所は今はまだ日立金属の大株主ですが、2023年にも日立金属株を売却する予定です。つまりこの3社は、ビジネスはこれまでどおり継続しますが、「御三家」を背負える状態ではありません。

では、日立グループが優良企業を手放しても得たかったものとはなんだったのか。それは、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフです。

会社概要

  • 本社住所:東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
  • 代表:社長兼CEO、小島啓二
  • 設立:1920年(創業1910年、明治43年)
  • 資本金:約4,617億円
  • 連結従業員数:368,247人
  • 東証プライム市場に上場
  • 連結売上高:10兆2,646億円(2022年3月期)
  • 大株主(多い順): 日本マスタートラスト信託銀行(18.79%)、日本カストディ銀行(6.52%)、ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー(2.36%)日本生命保険相互会社(2.07%)、日立グループ社員持株会(2.02%)

「日立」の歴史は明治時代にまでさかのぼり、今は東証プライム市場に上場する10兆円企業にまで成長しました。ただし、日立製作所の時価総額は約6兆円で、国内20位です。時価総額ランキングでは、トヨタ自動車やソニーグループはもちろん、ユニクロのファーストリテイリングや東京ディズニーランドのオリエンタルランドよりも下位に位置します。

ただ現状は「産みの苦しみ」のさなかにあるといってよく、これからIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つの領域で巻き返しを図っていきます。

日立のIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフとは何なのか
日立グループが大規模再編をしてでも注力することにしたのは、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つの事業です。5つとも広大なビジネス領域を持ちますが、日立グループが取り組む具体的な事業は以下のとおりです。

日立グループのIT
デジタルソリューション、コンサルティング、ソフトウェア、クラウドサービス、ITプロダクツ、ストレージ、サーバーなど
日立グループのエネルギー
原子力、再生可能エネルギー、火力、パワーグリッドなど
日立グループのインダストリー
産業・流通ソリューション、水・環境ソリューション、産業用機器など
日立グループのモビリティ
ビルシステム、エレベータ、エスカレータ、鉄道システムなど
日立グループのライフ
生活・エコシステム、家電、空調、計測分析システム、医療用機器、バイオ、半導体など

このように並べると新日立の姿が見えてきます。上記の5つの事業の順番は、日立製作所の有価証券報告書に書いてあるとおりに並べました。このような場合、重要なものから先に書いていくのが通例です。この理解が正しければ、日立グループが最も力を入れるのはITといえます。社長の小島啓二氏も「日立は最新のIT×OT×プロダクトを組み合わせて(中略)持続可能な社会の実現と人々の幸せの両立に挑戦していきます」と述べています。日立のITを深掘りしていきましょう。

日立のITとは
日立グループがITに最も力を入れているのは、これが大きなビジネスになるだけではなく、日立グループ内のその他の事業のデジタル化にも寄与するからです。経済産業省は企業に対しDX(デジタルトランスフォーメーション)化を促しています。ITやデジタルでビジネスを強化しないと世界の競争に勝てないからです。したがって、日立グループが顧客企業にITサービスやDXサービスを販売していくのは素直な流れです。そうであれば、日立グループ自身もDX化していかなければなりません。DXをビジネスにするなら、自身が最新のDXで武装していなければならないからです。日立製作所のIT部門は、他の事業部門のDX化を進める役割を担っています。日立製作所はDX強化策の一環として、2021年にアメリカのシステム開発大手、グローバルロジック社を約1兆円で買収しました。グループ内の優良企業を売却して得た資金でIT企業を買う構図になっています。「1兆円」は日立製作所の本気度を示すのに十分な額であり、IT企業に転身する不退転の決意とみることもできます。

総合力をあえて捨ててインフラに注力
日立グループの大再編の本音は、日立製作所の幹部の次の言葉に現れています。

「『日立の総合力』といっているだけでは駄目だ。弱い事業が集まっても何も起こらない」

日立グループに対しては従来からコングロマリット・ディスカウントを指摘する声がありました。これは多角化しすぎてかえって企業価値を起こしている状態のことです。日立グループが手がける事業は、原発や鉄道などインフラに関わるものが多く、これらは事業規模が大きくなるので国内市場だけを相手にしていても立ち行かなくなります。そこで日立グループは世界に打って出ているわけですが、そこには「世界の猛者」たちが待ち構えています。日立グループの鉄道事業の売上高は6,000億円程度ですが、中国の鉄道事業会社の中車は3兆円、ドイツのシーメンスは1兆円です。

日立グループはあえて総合力を捨て、その代わりにITという武器を強化してインフラ事業で世界で戦おうとしているのです。

日立製作所の特徴や価値観

日立製作所と、電機インフラの株式会社東芝(以下、東芝)と、ITインフラの日本電気株式会社(以下、NEC)を比較してみましょう。

 東芝NEC日立製作所(再掲)
資本金約2,009億円4,278億円約4,617億円
連結従業員数116,224人117,418人368,247人
連結売上高(2022年3月期)3兆3,370億円3兆141億円10兆2,646億円
上場東証プライム市場東証プライム市場東証プライム市場

この表からわかることは、東芝とNECを足しても、日立製作所の6割ほどである、ということです。

連結従業員数でみると、東芝とNECを足した数は233,642人(=116,224人+117,418人)で、日立製作所の368,247人の6割強です。前2社の連結売上高の合計は6兆3,511億円(=3兆3,370億円+3兆141億円)で、やはり日立製作所の10兆2,646億円の6割強です。先ほど「日立は総合力を捨てた」と紹介しましたが、それでも巨大企業(群)であることには変わりありません。

日立製作所の最近の動向

日立グループが世界で戦っている事例を紹介します。

フランス企業と組んでイギリスで鉄道事業を展開
日立製作所は2021年に、イギリスの次世代高速鉄道事業の受注に成功しました。この事業には車両の設計、製造、保守が含まれ契約金額は約3,000億円。日立製作所は鉄道事業の本社機能をイギリスに置く計画です。この事業はフランスのアルストム社との共同で行われるので、単なる日本の鉄道の輸出にとどまらず、複雑で高度なグローバル・ビジネスにデビューすることになります。

原発事業はイギリスで撤退してもカナダでリベンジする
もう1つの複雑で高度なグローバル・ビジネスは、カナダでの原子力発電事業です。この事業は、アメリカのゼネラル・エレクトリック社と組み、次世代原子力・小型モジュール炉を4基建設します。事業費は3,000億円で、この計画も2021年に公表されました。日立は2020年にイギリスの原発建設事業から撤退していました。撤退の理由は、総事業費が膨張して採算が取れなくなったことや、再生可能エネルギーが台頭して原発の競争力が低下したことだったと報じられています。
イギリスの原発事業の事業費は約3兆円で、撤退したことにより日立製作所は3,000億円の損失を計上しました。3,000億円は、カナダの小型原発事業の事業費と同額です。3,000億円損しても3,000億円の事業に参画するところに、日立製作所の原発にかける強い想いが透けてみえます。

日立製作所での働き方・キャリア

日立製作所の働き方・働かせ方とキャリア形成の特徴を紹介します。なお、日立製作所の社員の平均年齢は42.7歳で、平均勤続年数は19.3年、平均年間給与は8,969,979円です。同じ巨大モノづくり企業のトヨタ自動車株式会社は40.4歳、16.4年、8,571,245円なので、このレベルのメーカーは「40歳ぐらいで年収900万円程度」の収入が得られるとみてよさそうです。

週休3日で給与維持
日本経済新聞は2022年4月に「日立、週休3日で給与維持」という記事を配信しました。労働時間を減らすのに給与を維持すれば、人件費コストが上がって経営を圧迫するはずです。それでも日立製作所が週休3日+給与維持を導入した背景には、優秀な人材を取り込み、従業員の働く意欲を高め、生産性を上げる狙いがあるからです。ITやインターネットが普及したことで、仕事の知識集約化が進んでいます。このことにより時間と成果が必ずしも一致しなくなりました。つまり、労働者を長時間拘束しても大きな成果が出るとは限らず、労働時間を減らしても成果が増える可能性が出てきたわけです。したがって週休3日制度は「休みが増えてよかった」と喜べる一方で、「短い時間でこれまで以上の成果が求められる」厳しい内容も含まれると考えるべきでしょう。

まとめ~変わる決断をして変わった

大企業病という言葉があります。これは企業の規模が大きくなるにつれ社会や経済情勢の変化に対応できなくなり衰退していく現象のことです。日立グループは多角化と拡大を続けた結果「グループの事業分野において大規模な国際的企業からスタートアップを含む専業企業にいたるまで、多様な競合相手が存在する」状況に追い込まれました。
そしてグループの大規模再編に取り組んだわけです。日立グループは変わる決断をして変わることができた、稀有な企業群であるといえるでしょう。

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企業情報

企業名 日立製作所