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OEMは、Original Equipment Manufacturerの略称で、相手先ブランド名製造、納入先商標による受託製造などと訳される。A社がB社名の商品をつくるとき、A社をOEM企業と呼ぶ。

プライベートブランド製品(PB製品)はOEMである。小売業界では、価格の決定権や陳列する商品の選定などで、小売店とメーカーの利害が相反することがある。メーカーが、多くの消費者が求める魅力的な商品をつくれば、小売店はメーカーが提示する価格で購入しなければならない。不人気商品であれば、メーカーは小売店からの値下げ要請を受け入れるしかない。

コンビニでPB製品が活況を呈しているが、これは小売店側が強くなっていることが背景にある。コンビニはメーカーに対し、コンビニ・ブランドで商品をつくるよう要請し、しかも値下げを求める。メーカーは自社ブランドを隠さなければならず、しかも利幅が減る。それでもPB製品がコンビニでヒット商品になれば、メーカーも売上が伸び、工場の稼働率が上がり、結果、利益も増えるので応じざるをえない。

OEMを請け負う企業(メーカー)では、販売力と工場の稼働率が課題となっている。一般的に自社ブランドのほうが高い価格で売ることができるが、販売力が弱いと販売量を増やすことができない。また、ブランド力が弱いと、自社ブランドでは販売面で不利になる。そして、販売量が落ちると工場の稼働率が下がり、経営難に陥るリスクがある。それならば他社ブランドの製品をつくって工場の稼働率を上げたほうが経営にプラスになる。またメーカーが製造に専念すれば、販売コストを削減またはゼロにすることができる。コスト削減は利益を押し上げるので、OEMに専念することは高効率な経営に貢献する。

OEMに熱心で、かつ成功している企業にトヨタ自動車がある。トヨタ自動車の小型車の多くは、ダイハツ工業がつくっている。ダイハツがOEMでトヨタ車をつくっているわけである。ダイハツは単なるOEM会社ではなく、トヨタの完全子会社になっている。これによりダイハツは工場稼働率を上げることができ、トヨタは小型車以外の自動車の開発に専念することができる。ダイハツは業績が安定することで、自社ブランド車の開発にも投資できるようになる。トヨタは車種のラインナップを増やすことができるので、自社の販売店企業を潤すことができる。

台湾のIT企業のなかにはOEMでグローバルに成功しているところがある。鴻海精密工業はアップルのスマホiPhoneの7割以上を製造している。鴻海は日本のシャープを傘下に収めたことでも知られている。OEMというと下請のイメージがあるが、鴻海は最早そのようなレベルにはない。

台湾の半導体企業TSMCはファウンドリメーカーと呼ばれ、他社から委託を受けて半導体を製造している。概念としてはOEMと同じである。TSMCは半導体ファウンドリの世界シェアの半分以上を占め、時価総額はトヨタ自動車の2、3倍にもなる。TSMCはソニーと共同で、熊本県に半導体工場を建設する。設備投資は8,000億円で、1,500人を雇用する。日本経済と地域への貢献度が高いことから、日本政府は新工場の設備投資額の半額程度を支援する。