OJTはOn the Job Trainingの略称で、企業などにおいて、新入社員や若い従業員などを実際の仕事を通じて指導する人材教育手法である。
仕事を知らない人に仕事をさせるには、仕事のやり方や進め方を教える必要がある。OJTでは、仕事のやり方を教える前に実践に投入してしまい、仕事をやらせながら仕事を覚えさせていく。また、基本的なビジネス・マナーを教えただけで実際の仕事をやらせるのもOJTである。
OJTの最大のメリットは、時間を節約できることである。口頭や文章で説明してから仕事をさせる場合、仕事の知識を獲得する時間と実際の仕事を理解する時間の2つの時間が必要になる。OJTなら、実際の仕事をみながら、かつ、やりながら仕事の知識が得られるので早くスキルを獲得できる。
OJTを開発したのは、第一次世界大戦中のアメリカの造船会社だといわれている。戦争によって造船の需要が急拡大したことで、大量に従業員を雇ってすぐに工場で働かせる必要があった。そこで、新人に事前説明をあまりしないで製造現場に投入し、1)現場熟練従業員がやってみせる、2)説明する、3)新人にやらせる、4)確認して指導する、という4段階職業指導法が採用されるようになった。
OJTは生産性が高い人材教育手法と認知され、日本にも輸入された。OJTは日本の高度経済成長やバブル経済を支えたといわれることもある。
OJTのデメリットは、指導者によって教育の質にバラツキが出ることだ。教育スキルや指導スキルがない熟練従業員に教わると、新人は業務スキルの獲得が遅れるか、獲得できない。また職場に過度な上下関係が生まれやすい。なぜならOJTにおいて、指導者は絶対的な立場になりやすく、新人は絶対的に弱い立場になりやすいからである。そのため、OJTはパワハラやセクハラを生みやすいといえる。さらにOJTは現場に人材管理を任せることになるので、人事部や総務部などの、従業員の労務や安全衛生を掌握する部門の力が相対手的に弱くなる。したがって、人事部や労務部の監視・監督機能が働かず、労働環境の悪化を生みやすくなる。
現在では、OJTとともにOff-JTを利用する企業が増えている。Off-JTとは職場ではない場所で行なわれる人材教育のことである。新人研修や3年目研修、管理職研修などがOff-JTとなる。
Off-JTを行うことで、もし現場のOJTが間違った方向に進んでいたら修正することができる。また、熟練従業員や管理職にOff-JTを受けさせることで人材教育スキルを身につけさせることができ、さらにOff-JTを人事部などが企画すれば労務や安全衛生を監視、監督することができるようになる。