カルテル - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

カルテルは、不当な取引制限と訳される。公正取引委員会はカルテルを、複数の企業が連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれで決めるべき商品の価格や生産数量などを、共同で取り決める行為、と定義している。

カルテルではない状態、つまり正常の状態を考えてみる。例えば、ほとんど同じ商品を、A社が8万円、B社が9万円、C社が10万円で売っていたとする。このとき消費者は、最も安いA社の商品を買うだろう。そして実際にA社の商品を買った消費者は、C社の商品を買うより2万円得することになる。経済では一般的に、消費者が利益を得ることは正義に合致し、消費者の利益を損なって企業が利益を得ることを不正義と考えるので、消費者が2万円得する状態は正義である。

この正義は公正な競争によってもたらされる。つまりA社、B社、C社が競争をしたからこそ、A社がコストダウンや効率化、自社の利益を削る企業努力をして、他社より安い価格を実現したのである。

カルテルを行うと、3社とも10万円で売ることができる。消費者は10万円で買うしかなく、A社が8万円で売っていたころより2万円損することになる。A社とB社はかつてより高い価格で売ることができるので利益が増え、C社には客が戻ってくるのでやはり利益を増やす。企業の利益が増えることで消費者の利益を損ねているので、これは不正義になる。

カルテル(不当な取引制限)は、独占禁止法第3条で禁止されている。同条に違反すると、個人には5年以下の懲役、または500万円以下の罰金が科され、企業などの法人には5億円以下の罰金が科される。実際に1社で、他の罰則と合わせて6億4,000万円の罰金が科された事例がある。

カルテルは企業の力を奪うこともある。カルテルを結ぶと、企業努力が必要なくなる。高い価格でも売れるので、コストダウンする必要がないからだ。コストダウンは企業の創意工夫によって達成できるので、コストダウンが不要になると創意工夫をする動機がなくなる。さらにカルテルをすると、新製品を投入するタイミングが遅れるだろう。なぜなら、現行の商品でも十分売れるからだ。新製品を開発する動機がなくなると、企業の進化は止まる。

国内市場だけの勝負であれば、コストダウンに取り組まなくても、創意工夫をしなくても、新製品を投入しなくても売上高を維持できるかもしれないが、グローバル市場では通用しなくなる。なぜなら海外勢はコストダウンや創意工夫や新製品開発を進めているからである。

消費者の利益を考えても、また、自社の利益を考えても、カルテルはしてはいけないし、しないほうがよいといえる。