フェルミ推定 - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

フェルミ推定とは、予想しにくい数字を、論理的思考能力で概算すること。例えば日本にいる女性の人数は、総務省統計局が公表している人口推計を調べるまでもなく、約6,000万人と答えることができる。それを可能にするのは、「日本の人口は1億2,000万人といわれていて、男女の生まれる確率は恐らく50対50なので、女性はその半分くらいと推定できるので6,000万人ぐらいだろう」と概算できるからである。

フェルミ推定のポイントは、「日本の女性が約6,000万人であると推定されること」と「日本の人口が1億2,000万人であるといわれていること」と「男女は恐らく50対50の確率で生まれてくること」のすべてがあいまいであることだ。

例えば実際の2021年11月1日現在の日本の人口は1億2,507万人で、内訳は男性6,082万人、女性6,425万人と女性のほうが男性より5.6%も多い。そして、15歳未満だけで比較すると、全人口に占める男性の割合は12.4%で、女性は11.2%となり、男性の方が多い。年代の区切り方で女性が多くなることも男性が多くなることもあるので、数学的にはとても50対50とはいえないはずである。

「日本の人口が1億2,000万人であること」という知識は、実際より507万人も少ないし、「男女が50対50の確率で生まれてくること」は不正確であり、女性の人数は実際は6,425万人もいる。

しかし、フェルミ推定をする人が求めるのは、概算での正しさである。「女性6,425万人」は「女性6億人」より「女性600万人」よりも、「女性6,000万人」に近い。したがって「女性6,425万人は概算で6,000万人といってしまってよい」と決めることができる。

概算はいわば、いい加減な数である。そのため、概算での正しさは、答えを求める人の気持ちや感覚で決めることができてしまう。例えば、四捨五入を好む人は「6,000万人は大体1億人」と考えるので、この人は「日本の女性の人数はおよそ1億人」とフェルミ推定するだろう。

ではいい加減な数字だから使えないかというと、そのようなことはない。むしろ、感覚的に数字を押さえておきたいときは、正確な数字よりフェルミ推定で算出した概算のほうが便利なことがある。

ある天文学者は、フェルミ推定を「ある事柄について知りたい数値を、もっともらしい仮定に基づいて、1桁くらいの誤差の範囲で推定すること」と定義したうえで、天文学者が問題となっている対象を大雑把に理解するときに有益である、と指摘している。天文学者があるアイデアを出したとき、その妥当性をチェックするときにフェルミ推定は使えるという。

いい加減な数字であるフェルミ推定を意味あるものにするのは、仮定の妥当性である。先ほどの事例でいえば「日本の人口が1億2,000万人であること」も「男女が50対50の確率で生まれてくること」も、多くの人が妥当であると認めるだろう。

名称の由来は、フェルミ推定を得意とした、ノーベル物理学賞受賞者のエンリコ・フェルミである。