設計事務所とは、建築主の要望を聞きながら建築物の計画立案、設計、設計監理、工事監理等を業務とする事務所のことを指す。設計事務所は大きく分けると「組織系設計事務所」と「アトリエ系設計事務所」の2種類がある。
【組織系設計事務所】
組織系設計事務所とは意匠設計、構造設計、設備設計の各部門を自社内に抱える規模の大きな設計事務所のこと。設計業務の全般を請け負っており、商業施設や公共施設、医療施設、マンション、オフィスなどといった大きな建築物を手掛けることが多い。全国の主要都市に支店・支社等があり、日本あるいは海外各地の大規模な建築物の設計・監理を行っている。さまざまな建築物への対応が可能であるため、必然的に数多くの実績を蓄積している。一つひとつの建築物の規模が大きいため、資料作成やクライアントへのプレゼン、設計図の作成、施工監理などの各分野によって担当者を分けている。利害関係者が多いため交渉力やプレゼン能力も高い。組織系設計事務所はコストパフォーマンスや信頼性が優先されるため、堅実なデザインを得意とする側面が強い。
【アトリエ系設計事務所】
アトリエ系設計事務所とは比較的小規模で、建築家個人の個性や芸術性を反映した設計をする設計事務所のこと。主に意匠設計を得意とし、作家性や作品性が高い建築物を手掛けているのが特徴。多くが小規模な個人事務所だが、有名建築家が主宰する事務所など大規模なところもある。デザインで差別化することで徐々に大きな仕事を受注していくケースが一般的。組織系設計事務所に比べると、企業として利潤の追求よりも、事務所を主宰する建築家個人の作家性や作品性を追求する芸術家としてのスタンスに近い場合が多い。
組織系設計事務所もアトリエ系設計事務所も、以下のような業務を行う。
企画調査
- 建物調査
- 土地測量、調査
- 企画調査
- 資金計画
建築設計
- 基本設計(建物の基本形)
- 実施設計(意匠図、構造図、構造計算など)
- 建築確認申請、その他諸官庁への申請業務
- 積算
工事監理
- 施工業者選定
- 契約
- 工事監理(工事期間中の各種検査など)
- 工程管理(施工工程のチェック)
- 竣工検査
引き渡し
- 建物引き渡しの立ち会い
- 完成図他完成図書の引き渡し
- 維持保全についてのアドバイス
- 瑕疵検査(引き渡し後一年目の検査など)
建物の新築工事のほか、既存建物の維持管理やメンテナンスなどの場合にも、必要に応じて設計図書の作成や工事の監理等を行う。