インタビュー・レポ

【法学部→弁護士】女性弁護士というキャリアの可能性

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今回は、文科Ⅰ類から法学部に進学し、現在はさくら共同法律事務所で弁護士として活躍されている木村佐知子さんのインタビューをお届けします。

──文科Ⅰ類から法学部への進学を選択された理由をお聞かせください。

当時は文Ⅰからは皆法学部に進学していましたので、その意味では法学部に進学した理由は特にないのですが、文Ⅰを志望した理由についてお話ししますね。

子供の頃から、自分の専門分野を持って活躍する女性になりたいと思っており、高校生の頃は、外交官として活躍されていた、現在の皇后の雅子さまが憧れでした。当時イラク戦争が起こったことや、海外でのホームステイ経験などから外交官になりたいと思うようになり、高校の進路資料室にあった「外交官になるには」という本を読んだところ、外交官は80%が東大法学部出身である(※当時)という衝撃のことが書いてあったので、その流れで文Ⅰを志望しました。その後、色々と志望が変遷し、最初から法曹になろうと思っていたわけではないのですが、やりたいことを考える中で選択肢は広い方が良いなと思って弁護士を目指すことにしました。

──学生時代はどのようなことに力を入れていましたか?

司法試験の勉強を最初からもっと力を入れてしていればよかったのですが、東大では司法試験の勉強以上に魅力的なことがたくさんありすぎて(笑)、勉強ばかりとはとても言えない学生生活を送っていました。駒場の頃は、弁論部で政策立案を勉強しつつ、ディベート大会や弁論大会に出場しました。政治家を呼んで講演会を行ったりもしました。

その頃まではまだよかったのですが、一年生の途中で、東大歌劇団というオペラサークルに入り、そこからオペラにのめり込んでしまったのが運のつきでした(笑)私は合唱団の一員として、オペラの合唱を歌ったり舞台衣装や小道具を作ったりしつつ、オーディションを受けて、主役級の役も複数回やりました。合唱を元々やっていたとはいえ、一介の学生で、ど素人が、皆アマチュアである他の団員の皆と一緒に、オペラという総合芸術を創り上げるというのは、ここでしかできない経験でした。これに結局4年の冬まで打ち込み、司法試験の勉強はだいぶ遅れを取ってしまいましたね・・・

──学生時代に経験できてよかったことはどのようなことですか?

人との繋がりが大事だったなと思っています。勉強ばかりしていたわけではない分、サークルやアルバイト、音楽活動など、色々なところで沢山の人間関係に恵まれました。

オペラで遅れを取った分、後から司法試験の勉強に苦しむことになり、そのときは盆も正月も実家には帰らない、親の葬式以外の冠婚葬祭には出ない、という某司法試験のカリスマ講師の言に忠実に従い、人とのつながりを極力絶っていたのですが、司法試験に合格して弁護士になった後は、それまでの人間関係が自分の糧になっていることを実感しています。オペラをはじめとする音楽活動などに打ち組んだおかげで、法学に関係ない人とも繋がりができたのがありがたかったです。

──そうなんですね。私は好きなことを続けてもその時間が無駄になるのではと不安になってしまうことがあるのですが、どのようにお考えですか?

好きなことを続けて無駄になることはないと思います。

たとえばゲームをずっとやっていたという人も、ゲームで培った集中力が司法試験に役に立ったと言っていた人もいました(笑)

どこかで切り替えてスイッチを入れることが大切で、そのタイミングは人それぞれだと思います。

──木村さんにとって法律家を目指す切り替えのタイミングとはいつ頃だったのですか?

もともと教師の母と祖母から手に職をつけるよう言われ、女性としてサステナブルに働くために資格を取ろうと思っていました。将来的に故郷の秋田に帰るかもしれないと思ったときに、場所を選ばない法律家の仕事は魅力的だと思いました。

就活もしてみたのですが、自分がやりたいことをわかっていないと選びようがなくて、ここぞという会社がなかったんです。そこで大学4年生で本格的に司法試験を目指す決意をし、中央大学のロースクール(法科大学院)に行くことにしました。

中央大学法科大学院は司法試験対策を中心とした予備校のような感じで、東大での、アカデミックな勉強とはだいぶ雰囲気が違いました。それで、こんな試験勉強ばかりなのはつまらない、やりがいがない、とかなりやさぐれていたのですが、大学院での先生や友達に恵まれて感化され、途中で目が覚めました。司法試験対策をまじめにやろうと思って、オペラなどをキッパリやめ、勉強に集中しました。

今思えば、法曹を目指すなら早めにダブルスクール(大学と司法試験予備校の2つに通うこと)などして受かるのも一つの方法なのかなと思います。

女性なら、若い女性弁護士としてメディアに取り上げられることがチャンスに繋がったり、結婚・出産までの期間が長いのでキャリアが積めたりすると思います。

──大学時代にしておけばよかったと思うことについてお聞かせください。

大学1、2年生で進路について考える機会があれば良かったかなと思います。地方公立出身だとネットワークがあまりないので、進路選択などで情報戦に遅れをとり、だいぶのんびりしてしまっていました。就活も資格試験も、早期に確実に結果を達成するのには、やはり情報力で差がつくと思います。進路選択、勉強法、司法試験の予備校選びなども、もっと早い段階からさまざまな情報を仕入れて、考える機会があればなと思います。

──現在の木村さんの弁護士としてのお仕事の内容について教えてください。

現在のクライアントは、企業と個人が半々くらいです。企業からのご依頼では上場企業からスタートアップ企業までの顧問業務全般、個人からのご依頼では離婚、相続をはじめとする親族相続案件や、その他の一般民事案件(たまに刑事も)を行っています。

弁護士にも色々な弁護士がいますが、私の場合は、裁判や交渉ごとなどの、いわゆる紛争案件が比較的多いのが特徴だと思います。平日はほぼ毎日、裁判がありますが、最近は裁判のIT化が進んでWEB会議で裁判が行えるようになりましたので、移動時間が節約できて助かっています。

──法曹三者(弁護士・検察官・裁判官)のなかで弁護士を選んだ理由を教えてください。

当初は検察官にも興味がありましたが、司法修習で検察庁に配属され、自身が捜査官として業務を行った際に、自分が人を犯罪者にするかしないか(正確に言うと起訴するか、しないか)を決めるのは責任が大きすぎると感じ、検察は向いていないと感じました。裁判修習の際に、魅力的で優秀な裁判官の方にもたくさん出会いましたが、弁護士の方が自由度が高く、また人との繋がりを大事にしていけることが自分に合っていると感じました。 

──弁護士というと大変そう、というイメージがあると思うのですが、現在木村さんのお仕事はどれくらい大変ですか?また、どのような点を弁護士という仕事の魅力だと考えていますか?

弁護士の中には、本当に24時間働けますか、で常に働いている人もいますし、仕事とプライベートの境目が曖昧で、プライベートの時間がなかなか持ちにくいと言われることが多いと思います。私は、さすがに24時間は働けませんが、休みの日でも常にメールは見ていたり、電話を受けたり、家で仕事をしたり、とあまり仕事とプライベートの垣根がないような働き方ではあると思います。

とはいえ、多くの弁護士は、一人の独立した事業者として、裁量を持って仕事をしているので(特に経営弁護士になれば)、働く時間や場所などはある程度自由がきき、私のような子育て中の身でも、やりやすいところもあります(大変なことも多いですが・・・)。

また、自分の仕事を自分の名前と責任で受けられるというのも、弁護士という仕事の魅力だと思っています。好みはあると思いますが、大きな事件でテレビや新聞に出たりすることもありますよ(笑)

確かに弁護士の責任は重く、もし間違いを起こしたら他人の人生を変えてしまう可能性がある、いう危機感を常にもって仕事をしていますが、そのような責任重大な仕事を自分の腕一つでやっている、という実感はやりがいに繋がっていると思います。 

──実際に弁護士になってみて、想像していたイメージとのギャップはありましたか?

弁護士の仕事は地味かもしれません(笑)。実際の弁護士という仕事については、ドラマなどで派手なイメージを持っていましたが、やっていることは基本的には書面の作成であり、絵的には地味な作業です。裁判の主張書面を書いたり、契約書を作ったり、意見書を書いたり、という具合です。裁判でも、「異議あり!」とかやるのは証人尋問のときにはたまに、ありますが、尋問以外の裁判のときは書面の提出だけで終わることも多いです。

とはいえ、書面の作成というのは弁護士の本懐であり、司法試験の勉強のときから培ってきた法的思考能力、文書作成能力がそのまま活きている、と思い、勉強してきたことが無駄ではなかったな・・・と感じます。 

──男女共同参画にかかわる活動をされているとお聞きしました。具体的にどのような活動をされているのですか?

所属している、東京弁護士会の男女共同参画推進本部で、弁護士の働き方の改善などに取り組んでいます。

女性の弁護士は少なく、全体の20%にも満たないマイノリティの立場にあり、今時、セクハラやパワハラがまだまだ存在すると言われています。また、妊娠・出産といったライフイベントについて、必ずしも、きちんと産休・育休が取れたり、その後復帰して働き続けられる環境が整っているとはいえません。こうした問題意識のもと、弁護士会での働き方改革・ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいます。

2019年には、東京弁護士会で初めて、妊娠・出産・育児に関するサポート体制の整備や、これらを理由とした差別的取扱いの禁止などを明記した、ワーク・ライフ・バランス・ガイドラインを制定しました。そのほかにもさまざまな啓蒙活動などを行っています。弁護士は本当に女性が少ないですが、その中でも、労働者として労働法が適用され、保護に厚いとされるインハウスロイヤー(企業内弁護士)の人気が高くなってきています。弁護士事務所に勤める弁護士とインハウスロイヤーを比べたときに、前者が見劣りしないようにしなければいけないという問題意識を強く持っていて、弁護士事務所に勤める弁護士の良さをアピールしています。特に時間・場所を含む働き方に柔軟性があるというのは大きなアドバンテージなのではと思っていますが、弁護士業界全体として、もっとワーク・ライフ・バランスに関する意識を高める必要があると思っています。

──今後力を入れていきたい活動があれば教えてください。

個人的にですが、弁護士会での以上のような活動に加えて、 女性議員をサポートする活動をしています。これは、政治家の女性の割合が増えれば、女性が判断に携わる機会が増え、より働きやすく、出産・育児などがしやすい世の中になり、ダイバーシティを実現できるのではないかと思っているからです。女性と男性で必ずしも判断が違うわけではないですが、女性がもっと政治に携わるようになれば、社会が今までとは違った方向に変わっていくのではと期待しています。

──私は東大に入学してあまりの選択肢の多さに自分にしたいことを見失っている状況なのですが、そういった学生にどのようなアドバイスがありますか?

勉強にだけ集中していればいい大学受験と違って、大学に入ると選択肢が増えて誘惑が多くなりますよね。私が学生にアドバイスするなら、自分が選択した物に責任を持ってやりきることが大切だと伝えたいです。東大生は機会や人脈に恵まれているので、それを使えるうちに最大限利用して結果を残すことが大切だと思います。

──東大生にメッセージをお願いします。

後から後悔しないだけの時間も能力もあるので、やりたいことがあるなら悔いがないようにやって、将来を決めていってください。

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