電機業界を研究する【内定までの業界研究#12】 - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

この記事では、メーカーのなかでも電機メーカーについて解説します。

電機とは電気を使って動く機械のことで、ものづくりニッポンの代表的な製品です。電機製品の生産は日本の重要産業になっているだけでなく、電機業界には世界で活躍している企業が多数存在します。そのため就活を控えた大学生のなかには、電機メーカーを本命にしている人も少なくないはずです。

この記事では、電機業界のビジネスモデルや有力中心企業、業界の特徴、最近の動向、給与などを紹介します。

電機メーカーのビジネスモデル~どうやって稼いでいるのか

電機サブ1

電機メーカーのビジネスモデルを紹介します。

電機とは何か、という質問に答えることは簡単ではありません。なぜなら、日常生活やビジネスで使われている製品で、電気を使わないモノのほうが珍しいからです。

例えば電灯も電気で明るく光る機械なので電機です。半導体もパソコンも冷蔵庫もビルの空調もエレベーターもロボットも電機です。また最近は電気自動車が普及してきましたが、これは電気で走るので自動車でありながら電機です。したがって電機メーカーのビジネスモデルは、電機製品ごとに異なります。

研究、開発をしてよい製品をつくって売る

冷蔵庫の場合は、部品を集めて工場で組み立てて、完成品を家電量販店に売るというビジネスモデルになりますし、空調設備はビルになかに組み込んで建設会社に売るビジネスモデルになります。

ただ、電機業界に共通したビジネスモデルもあり、それは次のとおりです。

<電機メーカーに共通したビジネスモデル>

  • 研究、開発をして新しい技術と便利な機能を生み出す
  • マーケティングをして顧客や消費者のニーズをつかむ
  • デザインを工夫して格好いい製品にする
  • 生産方法を改善してコストダウンに努める
  • 営業や販売を強化して売る
  • 宣伝をして売上高を増やす
  • グローバル展開する(世界に売る)

ただこのビジネスモデルはすべての電機メーカーに当てはまるだけに、具体的なイメージが湧きづらいと思います。そこである1社のある1つの製品のビジネスモデルを確認してみましょう。

日立製作所の鉄道事業のビジネスモデル

日本を代表する電機メーカーに、日立製作所があります。あとで紹介するように、同社はあらゆる電機製品をつくっていますが、ここでは鉄道事業のビジネスモデルを紹介します。

日立は鉄道車両、駆動用制御装置、列車運行管理システム、電力管理システム、情報サービスをつくっています。なぜ日立が鉄道車両だけでなく、鉄道を走らせるすべてのものを開発、製造しているのかというとビジネスを大きくするためです。例えば新幹線の車両は1両大体2、3億円です。これも大きな金額ですが、鉄道のすべてを受注できるともっと大きなビジネスになります。

日立はイギリスの高速鉄道事業を5,500億円で受注しました。この事業はイギリス政府も深く関与する国家プロジェクトで、日立はこの事業を受注するためにイギリスに新工場を建てました。日立がイギリス側から請け負う業務は、車両の製造、保守業務、鉄道システムの構築などです。日立が鉄道を走らせるすべてのものを構築できたから5,500億円のビジネスを獲得できました。

日立の鉄道事業のビジネスモデルは、「鉄道運行に関するすべてを用意することで先進国の鉄道事業を丸々請け負うことができる体制を整えること」となるでしょう。

有力中心企業はソニー、日立、パナソニック

日本では電機大手8社という呼び方が定着していて、その8社は次のとおりです。

<電機大手8社>

ソニーグループ、日立製作所、パナソニック、三菱電機、富士通、東芝、NEC、シャープ

ここでは、売上高トップ3のソニー、日立、パナソニックを有力中心企業として、その概要を紹介します。

3社の会社概要、メインの商品・サービス、企業理念の紹介

3社の会社概要は以下のとおりです。数字はいずれも2021年3月31日現在のものです。

電機業界比較表

同じ電機メーカーでありながら、扱っている商品やサービスは大きく異なります。

最も電機らしくないと感じるのはソニーではないでしょうか。ゲーム、音楽、映画、銀行、保険でソニーを知っている人のほうが多いかもしれません。

日立がつくる電機は鉄道、建設、エネルギーなど「重いモノ」が多い傾向があります。インフラに関わる電機を多く手がけています。

家電のイメージが強いパナソニックですが、最近は自動車業界や住宅業界向けの製品を数多く手がけています。

各社の理念は次のとおりです。

・ソニー:クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。

・日立:優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する

・パナソニック:「より豊かなくらしをおくりたい」という人々の願いを満たしていく

3社の売上高と営業利益と純利益の比較

3社の直近3年間の売上高と営業利益と純利益を見てみます。

電機業界売上高比較表
電機業界営業利益比較表
電機業界純利益比較表

売上高では、2020年度は1位ソニー、2位日立、3位パナソニックという順番でしたが、2019年度と2018年度は日立が1位でした。トップ3でも激しい売上競争を展開していることがわかります。

そして営業利益と純利益をみると、ソニーの強さが2社を圧倒しています。2020年度のソニーの純利益1兆1,718億円は、パナソニックの1,651億円の7倍です。2019年度のソニーの純利益5,822億円も、日立の876億円の7倍です。ソニーはかなり効率よく稼いでいることがわかります。

電機業界の特徴

ソニー、日立、パナソニックから電機業界を眺めると、巨大な組織であり、多種多様であることがわかります。そのため、電機メーカーに就職したいと思っている学生は「電機メーカーに入社したい」と漠然と考えるのではなく「あの製品をつくりたい」「あのサービスを提供したい」「この仕事がしたい」「こういう形で社会に関わりたい」といったように、具体的な仕事をイメージしながら検討したほうがよいでしょう。

電機大手8社まで視野を広げると、選択肢はさらに広がります。例えば、カメラやスマホ、半導体をつくりたいと考えている人は、ソニーが向いているかもしれません。発電所をつくりたい、電車をつくりたい、水道設備に関わりたい、インフラを構築したいと考えている人は日立や東芝、三菱電機が向いているかもしれません。家電や自動車部品、住宅設備に関わりたいのならパナソニックやシャープがよいかもしれません。ITに携わる仕事がしたいのであれば、富士通やNECを検討してみてはいかがでしょうか。

大手の電機メーカーは事業を手広く展開しているので、学生がその全体像をとらえることに苦労するでしょう。したがって就活では、個々の企業が何をしているのか調べて、自分がその仕事をしたいのかどうかを考えて的を絞っていくことをおすすめします。

電機業界の最近の動向~マスコミ報道から

電機サブ2

日本経済新聞は2021年3月28日、「ソニー、4月に社名変更へ 『RE:SONY』まとめ読み」という記事を公開しました。ソニーは同年4月1日、ソニー株式会社からソニーグループ株式会社に社名を変更しました。ソニーグループ株式会社をグループ本社機能に特化した会社にしました。「ソニー株式会社」という会社は消滅したのではなく、エレクトロニクス(電機)を担う会社になりました。つまりソニー株式会社もソニーグループの一員になったわけです。

ソニーが社名を変更したのは1946年以来で、以前は東京通信工業という社名でした。当時はまだカタカナの社名が珍しく、メインバンクも「ソニー」という名称にすることに反対しました。「ソニー電子工業」や「ソニー電気」という代替案が示されましたが、「ソニー株式会社」に決定した理由としては、電子や電気にとらわれるものではない、という想いがあったからです。

そして現在のソニーは、電子、電気、電機だけでなく、音楽、映画、金融、ゲームにも手を広げ、そのすべてで成功しています。そのソニーをソニーグループにしたのは、「ソニーといえば電子、電気、電機」というイメージを払拭したかったからでしょう。「グループ」とすれば、電子、電気、電機事業とその他の事業に差がなくなります。

いろいろなものをまとめるソニーに対し、日立は切り離しを進めています。日立製作所は2022年に上場子会社の日立建機の保有株の約半分を売却する方針を示し、その前には日立化成も売却しています。日立金属の売却も検討されています。日立が優良子会社を切り離すには、IT事業に専念するためです。日立がグループ会社の再編に取り組むのは、リーマンショック後の2009年に7,873億円もの赤字を計上したからです。それから10年余の年月をかけて新生日立をつくってきたといえます。株式市場は日立の取り組みを支持しているといえ、日立の株価は2009年の約1,000円から、2022年は約6,000円へと6倍になっています。

電機業界はゆっくりとしかし確実に大きく変化していく業界といえそうです。

給与水準

ソニー、日立、パナソニックの給与水準を確認しておきます。

・ソニーグループ株式会社(2020年度有価証券報告書から)

平均年齢42.2歳、平均勤続年数16.5年、平均年間給与10,440,010円

・株式会社日立製作所(2020年度有価証券報告書から)

平均年齢42.6歳、平均勤続年数19.2年、平均年間給与8,902,877円

・パナソニック株式会社(2020年度有価証券報告書から)

平均年齢45.8歳、平均勤続年数22.7年、平均年間給与7,439,769円

ソニーなら40代で1,000万円プレイヤーになれます。ただ、日立もパナソニックも「よい給料」といえるでしょう。

いずれも入社することが難しい企業ですが、チャレンジする意義はあります。

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