自動車業界を研究する【内定までの業界研究#13】 - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

この記事では、メーカーのなかでも自動車メーカーについて解説します。

経済産業省は自動車産業のことを「日本の基幹産業」と呼び、その発展のために市場の活性化策に取り組む、とまで宣言しています。公平が求められる政府(経済産業省)が1つの業界のことをここまで高く評価することはまれで、自動車業界が日本経済にとってどれほど重要であるかがわかります。

この記事では、自動車業界のビジネスモデルや有力中心企業、業界の特徴、最近の動向、給与などを紹介します。

自動車メーカーのビジネスモデル~どうやって稼いでいるのか

自動車メーカーのビジネスモデルを紹介します。この業界の特徴は変化が激しいことです。従来型のビジネスモデルは健在ですが、新たな形のビジネスモデルが次々投入されています。

従来型ビジネス:1)部品を集めて組み立てる、2)グローバル

まず、従来型であり今も現役であり続けているビジネスモデルをみていきましょう。

自動車には約3万点の部品が使われていますが、自動車メーカーが3万種類の部品をつくっているわけではありません。トヨタやホンダなどは自社で部品をつくることはほとんどなく、別の会社につくらせています。これを外注化といいます。自動車メーカーは部品メーカーに「こういう部品をX個つくって欲しい」と発注し、部品メーカーがそれをつくって納品します。自動車メーカーは外注先から集めた部品を自社工場で組み立てて自動車をつくります。

そして自動車業界にはもう1つ重要なビジネスモデルがあり、それは海外への輸出と海外での生産です。国内の自動車工場でつくられる自動車は年間約1,000万台で、そのうち約6割が国内で販売され約4割が海外に輸出されます。そして日本の自動車メーカーの海外の工場でつくられる自動車も、大体1,000万台です。自動車メーカーで働くということは、日本の重要産業で働くことであり、グローバル企業で働くことでもあります。

新型ビジネス:環境にも手を広げている

自動車業界の新しいビジネスモデルは環境ビジネスです。

水素は強力な爆発力を持つので、ガソリンのように自動車などのエネルギーになります。また、水素は酸素と結びつくと発電するので、水素で電気自動車を動かすこともできます。しかも水素は電気をつくると水しか排出しないので、クリーンエネルギーといえます。

つまり水素で自動車を走らせることは環境ビジネスになるわけです。

自動車に水素を使う取り組みで先行しているのがトヨタ自動車です。水素で電気をつくって走らせる燃料電池自動車(FCEV)ミライを販売したり、ガソリンエンジンを改良して、水素でエンジンを動かす自動車でレースに参戦したりしています。そしてトヨタ自動車は、川崎重工、岩谷産業、電源開発(J-POWER)と共同で、オーストラリアでつくった水素を日本に運んで、日本で自動車に使う取り組みにも着手しています。

複数の異業界企業と組んで水素事業を展開するというビジネスモデルは、かなり野心的な取り組みといえます。

有力中心企業はトヨタ、ホンダ、日産

自動車サブ1

日本の自動車メーカーのうち、日本自動車工業会の会員になっている企業は以下のとおりです。

<日本自動車工業会の会員、50音順>

いすゞ自動車株式会社

カワサキモータース株式会社

スズキ株式会社

株式会社SUBARU

ダイハツ工業株式会社

トヨタ自動車株式会社

日産自動車株式会社

日野自動車株式会社

本田技研工業株式会社

マツダ株式会社

三菱自動車工業株式会社

三菱ふそうトラック・バス株式会社

ヤマハ発動機株式会社

UDトラックス株式会社

このうち時価総額上位3社のトヨタ自動車(以下、トヨタ)、本田技研工業(以下、ホンダ)、日産自動車(以下、日産)を有力中心企業として、そのビジネス内容を詳しくみていきます。

3社の会社概要、メインの商品・サービス、企業理念の紹介

3社の会社概要は以下のとおりです。数字はいずれも2021年3月31日現在のものです。

自動車業界比較表

連結従業員数はトヨタが圧倒的で、ホンダと日産を足しても追いつきません。あとで詳しく紹介しますが、売上高も「トヨタ>ホンダ+日産」となっています。

各社の理念は以下のとおりです。

・トヨタ:わたしたちは、幸せを量産する。可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。

・ホンダ:人間尊重(自立、平等、信頼)、三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)

・日産:人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。

3社の売上高と営業利益と純利益の比較

3社の直近3年間の連結の売上高と営業利益と純利益を見てみます。△は赤字です。

自動車業界売上高比較表
自動車業界営業利益比較表
自動車業界純利益比較表

2020年度の売上高は、トヨタの27兆2,146億円に対し、ホンダと日産を足しても21兆0,331億円(=13兆1,705億円+7兆8,626億円)です。さらにトヨタと日産を比較すると、トヨタの売上高は日産の売上高の3.5倍にもなります。そして日産は2019年度、2020年度ともに営業利益と純利益が赤字に転落しています。

トヨタとホンダの稼ぐ力をみてみましょう。トヨタは2020年度に27兆2,146億円を売り上げて、2兆2,824億円の利益をあげているので「利益÷売上高」は8.4%になります。ホンダは13兆1,705億円を売り上げて、6,954億円の利益をあげているので「利益÷売上高」は5.3%になります。トヨタのほうが効率よく稼ぐことができているといえるでしょう。

自動車業界の特徴

自動車業界の特徴は、もちろんモノづくりなのですが、それだけで語ることができないスケールの大きさがあります。

例えば、バスとタクシーがなかったら交通網は貧弱になってしまうでしょう。トラックがなければ建設工事や土木工事の効率は悲劇的に悪化するはずです。つまり自動車は「インフラのインフラ」といえ、世界の人々の生活と世界経済になくてはならない製品です。そして日本の自動車は世界中に輸出され、世界各国でつくられているので、自動車メーカーで働くことは、世界のインフラのインフラを支えることになります。

自動車メーカーのなかには、自動車以外のモノをつくっているところもあります。

トヨタは、静岡県裾野市にあった子会社の工場跡地、約71万平方メートルに新しい街をつくっています。実際に2,000人が住む街全体で、自動運転やモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム、AI(人工知能)技術を試すそうです。

そしてホンダは飛行機をつくってしまいました。しかもホンダの飛行機ホンダジェットは、2021年まで5年連続で世界の小型ジェット機部門で1位に輝いています。

自動車業界の最近の動向~マスコミ報道から

自動車サブ2

最近のマスコミ報道から、自動車業界の動向を探ってみます。

日本経済新聞は2022年2月7日に「日産がエンジン開発終了へ まずは欧州、日中も段階的に」という記事を発表しました。自動車メーカーがエンジンの開発を終了するとはどういうことなのか、と驚かれました。ただ日産が終わりにするのは、ガソリンエンジンの新規開発です。これは世界的に排ガス規制が強化されているためで、ガソリンエンジンではどれだけクリーンにしても規制に追いつかないと判断しました。日産はガソリンエンジンの代わりに、電気自動車やハイブリッド車向けの駆動装置の開発に投資していきます。

車載半導体、供給急増も需給なお逼迫 在庫確保活発に」(日本経済新聞 2022年3月1日付け)では、半導体メーカーが自動車メーカー向けの車載半導体の出荷を急増させていることを伝えています。世界のさまざまな産業が半導体不足に悩まされていますが、日本の半導体メーカーの車載部門の2021年10~12月期の売上高は前年同期比20~30%増と大幅に伸びています。つまり半導体が自動車業界に流れ始めているわけですが、記事はそれでも逼迫感が強いと伝えています。

半導体の供給問題はまだしばらく尾を引きそうです。

給与水準

トヨタ、ホンダ、日産の給与水準を確認します。2021年3月31日現在の数字です。

トヨタ

平均年齢40.0歳、平均勤続年数16.2年、平均年間給与8,583,267円

ホンダ

平均年齢44.9歳、平均勤続年数22.5年、平均年間給与7,989,000円

日産

平均年齢41.6歳、平均勤続年数16.9年、平均年間給与7,965,467円

トヨタが頭1つ抜けている印象がありますが、ホンダも日産も40代で約800万円という水準なので魅力的な金額といえるでしょう。

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