
「不動産・建築」業界とはどのような存在なのか――。
企業研究を始めていない大学1、2年生であれば、不動産/建築業界の概要をしっかり把握できていないかもしれません。
不動産/建築業界とは、土地や建物全般を扱う業界です。
では、企業として土地や建物を扱うということは、どのようなことなのでしょうか。
詳しく解説していきます。
不動産/建築業界とは土地や建物の開発・流通・管理を行う業界
「不動産/建築業界」とは、不動産、つまり土地・建物を扱う仕事をしています。
具体的には、土地や建物の「開発」「流通」「管理」を手掛けるのが不動産/建築業界の大まかなイメージです。
厳密には「不動産業界」と「建築業界」では手掛ける領域が大きく異なり、建築業界が土地や建物の開発を主に手掛けており、不動産業界は建築業界が開発した不動産の流通や管理の領域を手掛けています。
具体的に役割を分けると、「デベロッパー」という企業が用地確保や建築企画(街づくり企画)を計画し、これを「ゼネコン」という企業に発注して実際の建築が進むというイメージです。
大規模なプロジェクトの場合であれば、ゼネコンとデベロッパーが共同して企画・開発を進めるケースもあります。
不動産/建築業界が活躍していることによって、土地や建物の売買がスムーズに行えているのです。
不動産/建築業界のビジネスモデル

不動産/建築業界のビジネスモデルは、まず土地・建物を開発(建設)し、完成した不動産を流通させ、販売された不動産が適切に利益をもたらしているかどうかを管理するという形が基本となります。
主に建築業界が土地・建物の開発を行い、それを不動産会社が流通および管理するのが基本のビジネスモデルです。
ここでは、建築業界のビジネスモデルを「大和ハウス工業」を例に、不動産業界のビジネスモデルを「三井不動産」を例にして解説します。
大和ハウス工業のビジネスモデルとは
大和ハウス工業の事業は、「住宅事業」「賃貸住宅事業」「流通店舗事業」「建築事業」「マンション事業」「環境エネルギー事業」「海外事業」から成り立っています。
2021年3月期の売上高は約1兆8,600万円と業界トップクラスです(*1)。
「人・街・暮らしの価値共創グループ」として顧客と共に新たな価値を創り出し、それを活かし・高めて人々が心豊かに生きる社会の実現を目指しています(*2)。
ニューノーマル時代を見据えた住まいの提案として、在宅勤務できるオリジナルのテレワークスタイルや、家族で家事をシェアする家事シェアハウス、災害時に電気を自給自足する家など、社会や生活の変化に合わせたさまざまな課題の解決にも取り組んでいます。
環境エネルギー事業においては、太陽光発電所・メガソーラーといった再生可能エネルギー発電所の設計・施工や、電力小売事業、再生可能エネルギー発電所の開発を柱として、再生可能エネルギーの普及に貢献しているのです。
(*1)https://www.daiwahouse.co.jp/company/outline/index.html
(*2)https://www.daiwahouse.co.jp/company/work/index.html
三井不動産のビジネスモデルとは
三井不動産の事業は、「賃貸」「分譲」「マネジメント」などから成り立っています
2020年度実績での年間売上高(連結)は約2兆円と、業界トップクラスの水準です(*3)。
国内最大級のショッピングセンターである「三井ショッピングパークららぽーとTOKYO BAY」をはじめ、さまざまなコンセプトのショッピングセンターを全国で展開しています(*4)。
海外展開もしており、アメリカやイギリス、東南アジア等において住宅分譲を行っている企業でもあります。
三井不動産では現在、不動産の枠を超えて「デジタル」と掛け合わせることにより、新たなイノベーションを生み出すことを目的として外部パートナーと協業し、ダイバーシティな組織において「働く」「住まう」「楽しむ」の戦略領域の事業検討を進めています(*5)
(*3)https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/about_us/outline/
(*4)https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/individual/business/outline/rent.html
(*5)https://www.mitsuifudosan.co.jp/innovation/
不動産/建築業界の市場規模
業界は、その種類によって市場規模が大きく異なるため、市場規模の定義はあいまいなのですが、おおむね「その業界に属する企業の年間売上高の合計」と考えて良いでしょう。
業界動向SEARCH.COMの調べによると、2021年度(2020年~2021年)の不動産業界の業界規模は15.5兆円(*6)、建築業界の業界規模は15.6兆円となっています(*7)。
建築業界の市場規模は2019年度をピークとしており(16兆円以上)、近年は低下傾向にあります。
(*6)https://gyokai-search.com/3-hudosan.htm
(*7)https://gyokai-search.com/3-kensetu.htm
(*8)https://www.g-career.net/columns/detail/55
不動産/建築業界の近年の景気動向
近年の景気動向において、どの業界にも等しく影響を与えているのが「新型コロナウイルス感染症の影響」でしょう。
帝国データバンクの見立てでは(2021年7月時点)、2020年から2021年にかけて若干の回復傾向はみられるものの、業界全体としてはまだまだ低迷期であると評価しています(*9)。
前述の通り、建築業界は2019年をピークに市場規模が拡大傾向にありましたが、これを支えていたのは「東京五輪2020」の影響が極めて大きかったのです。
すでに東京五輪は終了しており、その影響は終了していますので、今後は新型コロナウイルスの影響による景気低迷の影響を強く受けることになるでしょう。
特に「リモートワーク」などのウィズコロナの働き方の変化と景気低迷により、業務用のオフィスの解約が相次いでいる一方で、リモートワーク用の個人での不動産契約が増加傾向にある点は無視できません。
また、いわゆる「インバウンド需要」による外国人向けの産業が低迷している影響により、特に外国人向けの宿泊施設としてのホテル需要は大きく低迷することになりました。
また、建築業では「人手不足」の影響も決して小さくありません。
一方で、不動産業界では2021年にマンションを中心として不動産価格が高騰している点は押さえておきましょう。
(*9)https://www.tdb.co.jp/report/industry/kenchiku.html
就活生からの人気
「発表!2022年卒の就活生が選ぶ人気企業とは?~就職希望企業ランキング:総合編~」によると、不動産業界では、37位に「三井不動産」、49位に「三菱地所」がランクインしています。
一方で建築業界では、55位に「鹿島建設」、68位に「清水建設」、71位に「大林組」がランクインしている状態です。
数字だけ見ると、不動産/建築業界はあまり就活生から人気がない業界であると評価せざるをえません。
この点も、建築業界の人手不足に大きく影響しているのでしょう。
不動産/建築業界へ就職する魅力

ランキングだけ見ると、不動産/建築業界は人気がない業界であるというイメージが先行してしまいます。
しかし、不動産/建築業界に就職することには、以下のような魅力がある点を忘れてはいけません。
不動産業界の魅力
不動産業界で働くことの最大の魅力は「お客とのコミュニケーションを大切にする仕事である」ことにあります。
不動産を探している顧客に対して寄り添い、適切なアドバイスをすることで顧客にとって最適な不動産えらびを提供することは、不動産業界で働く人にとって重要な仕事です。
不動産という、決して安くない買い物に関わることになるため、適切なアドバイスができれば多くの顧客から感謝されることでしょう。
また、不動産業界は「若くても高収入が見込める」という魅力があります。
不動産業界での給料は、多くの場合は「固定給+インセンティブ」の形で支払われるのです。
つまり、自分の頑張り次第でいくらでも収入を伸ばすことができるため、仕事に対してやりがいを持って取り組むことができます。
他にも「独立しやすい」という点も無視できない魅力です。
仲介業のような「在庫を持たない形式のビジネス」は、資格とノウハウ、営業力や人脈などを駆使することで早くから独立を視野に入れている不動産業界の方も少なくありません。
建築業界の魅力
建築業界で働くことの最大の魅力は「人々の生活に欠かせない役割を担っている」ことにあります。
たとえば、あなたが通っている大学や、暮らしている家、その周辺の道路や商業施設もすべて、建築業界で働く人の手によって生み出されているのです。
もし「住む家がない」「通う大学がない」「通る道が整備されていない」「買い物できる施設がない」となれば、生活の不便さは言うまでもありません。
また、自然災害等で建物や道路が損傷してしまったら、それを直すのも建築業界の重要な役目です。
さらに、建築業界の魅力といえば「チームワークが重要な仕事である」ことも挙げられます。
高層ビルや広い敷地面積を持つ商業施設など、大型の建造物になればなるほど、多くの人の手によって建物が作られています。
多くの人と協力しながら巨大な建造物を完成させた際の喜びは一入(ひとしお)です。
他にも、海外の建物やインフラ整備などの、海外での活躍の場が与えられるかもしれないという点も、建築業界の重要な魅力だといえます。
まとめ
本記事の内容をまとめます。
不動産/建築業界は土地や建物の開発・流通・管理を手掛ける業界です。
市場規模はそれぞれ15兆円クラス、人手不足が目立つ業界でもあります。
人とのコミュニケーションや生活のインフラ整備など、人の暮らしに欠かせない役割を担っている点が大きな魅力です。
大学1、2年生が1、2年後に就活を始めるときは、ぜひ不動産/建築業界についても研究してみてください。
この記事では不動産/建築業界を「大づかみ」で解説しました。つまりマクロの視点で企業をみたわけですが、今後はミクロの視点で各業界や各企業について細かく分析した記事も紹介します。