
先進国においては、暮らしに必須の3要素「衣・食・住」のうち、「住」の分野を担っているのは「建築業界」や「不動産業界」と呼ばれる企業群の貢献が大きいです。
そんな建築・不動産業界をさらに細分化していくと、「ゼネコン」「デベロッパー」といった細かい業界に分類できますが、その1つである「ゼネコン業界」はどのようなビジネスモデルで企業活動をしているのか気になる方は少なくありません。
そこで今回は、ゼネコン業界のビジネスモデルや有力企業に関する情報を中心に、これからゼネコン業界に就職を考えている方に必要な情報についてまとめてみました。
ゼネコン業界のビジネスモデル
ゼネコンとは「ゼネラル・コントラクター」の略です。
英語で「General=全体的な」「Contractor=請負人、土建業者」という意味があり、直訳すると総合建設業者のことをゼネコンと呼んでいます。
ゼネコンは、マンションやビルをはじめとして、さまざまな大型建築を建てる会社の総称として使われることが多いです。
ゼネコンに関する明確な定義はないのですが、建築分野に関する「設計」「施工」「研究」の3つを行っている会社であり、その中でも売上げ規模が数千億~数兆円ある会社のことを、一般的にゼネコンと呼んでいます。
建築・不動産業界の一般的なビジネスモデルは「建造物の企画を行い」「それに則って建物を建築し」「その建物を販売・管理する」という3つのフローを経るわけですが、ゼネコンはそのうち「建物を建築する」という部分を担っています。
実際には、ゼネコンは請け負った建築計画に必要な建築者の確保について、いわゆる「下請け業者」に発注し、ゼネコン自信は下請けおよびその孫請け以降の建築会社の作業を監督する立場になることが多いです。
有力中心企業紹介(現在の売上高上位3社)
ゼネコンは、その売り上げ規模に応じて「スーパーゼネコン」「準大手ゼネコン」というランクに分けることができます(場合によっては準大手ゼネコンを「大手ゼネコン」と分けるケースもあり)。
スーパーゼネコン
- 鹿島建設
- 大林組
- 大成建設
- 清水建設
- 竹中工務店
準大手ゼネコン
- フジタ
- 長谷工コーポレーション
- 前田建設工業
- 戸田建設
- 熊谷組
基本的な分け方は「売上規模が1兆円を超えるかどうか」であり、最大手の「鹿島建設」になると2兆円近い規模になります。
今回は、スーパーゼネコンの中でも特に売り上げ規模の大きい「鹿島建設」「大林組」「大成建設」の3社を比較してみましょう。

どの企業も1900年代に会社設立していますが、創業はいずれも1800年代となっています。
最も歴史の古い「鹿島建設」になると、1840年、元号で言えば天保になるため、江戸時代から仕事をしている企業であることがわかります。
有力企業3社の企業理念
鹿島建設・大林組・大成建設の企業理念は以下のとおりです。
- 鹿島建設:全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。
- 大林組:「地球に優しい」リーディングカンパニー
- 大成建設:人がいきいきとする環境を創造する
いずれの企業も「創造」「環境」を重要なキーワードとした理念を掲げています。
この点については、ゼネコン業界が「建設」という仕事をメイン事業としていることが関係しており、就職活動・企業研究においては創造・環境に関心を向けることが重要です。
有力企業3社の3年間の推移
次に、鹿島建設・大林組・大成建設の3社の、3年間の経営成績について見てみましょう。



売上の数字はほぼ横ばいであると評価できますが、営業利益および当期純利益は若干ですが下降していることがわかります。
ゼネコン業界は「東京五輪特需の終了」と「新型コロナウイルスの影響」を受けたことにより、利益が圧迫されていると考えられます。
ゼネコン業界の最近の業界情報

ゼネコン業界の動向として注目するべきキーワードは「コロナ禍」と「人手不足」の2つです。
新型コロナウイルス感染症の影響は、民間だけでなく企業にも大きな影響を与えています。
リモートワークなどの働き方が浸透したことや、民間需要の減少の影響を強く受けた企業を中心として、設備投資に資金を投入する動きが鈍ったのです。
必然的にオフィス建設などの需要も低下してしまったため、上記のデータにもあるように2020年度の売上実績は大手3社とも減少しています。
また、利益の圧迫についても注目しなければなりません。
ゼネコン業界は人手不足が慢性化しており、その影響により労務費が高騰した結果、ゼネコン業界は利益を圧迫される結果になりました。
また、利益圧迫の原因として、コロナ禍の影響で海外産の建材の輸送コストが高騰したことによる資材費の高騰の影響も無視できません。
日本においては度重なる災害の影響により、防災・減災関係の建設需要こそ高まっているものの、東京五輪特需がなくなった現状においてゼネコン業界の先行きは不透明であると言わざるを得ないでしょう。
ゼネコン業界の給与水準

ゼネコン業界、大手3社が有価証券報告書で公表している給与関連の情報は以下のとおりです。
・鹿島建設(2020年度、第124期事業年度)
平均年齢:44.1歳、平均勤続年数:18.3年、平均年間給与:11,351,777円
・大林組(2020年度、第117期事業年度)
平均年齢:42.6歳、平均勤続年数:17.1年、平均年間給与:10,320,957円
・大成建設(2020年度、第161期事業年度)
平均年齢:42.9歳、平均勤続年数:18.2年、平均年間給与:9,850,653円
40歳まで働けば、大手ゼネコンであれば1,000万円を超える年収が得られることがわかります
マイナビエージェントのアンケート調査によると、ゼネコン業界全体の平均年収は415万円となっています。
どちらかというと「年功序列」の傾向が強い企業が多いようです。