
先進国においては、暮らしに必須の3要素「衣・食・住」のうち、「住」の分野を担っているのは「建築業界」や「不動産業界」と呼ばれる企業群の貢献が大きいです。
そんな建築・不動産業界をさらに細分化していくと、「デベロッパー」「ゼネコン」といった細かい業界に分類できますが、その1つである「デベロッパー業界」はどのようなビジネスモデルで企業活動をしているのか気になる方は少なくありません。
そこで今回は、デベロッパー業界のビジネスモデルや有力企業に関する情報を中心に、これからデベロッパー業界に就職を考えている方に必要な情報についてまとめてみました。
デベロッパー業界のビジネスモデル
デベロッパー(Developer)とは、マンションやビルなどの不動産を開発する専門業者のことです。
不動産/建築業界では「土地と街の開発業者」という立ち位置となっており、大型マンションや複合商業施設などの大型施設の開発を主として手掛けています。
デベロッパーと同じく建築業界の仕事である「ゼネコン」とは基本的に協力関係にあります。
デベロッパーとゼネコンの違いとしては、ゼネコンは建築関係を統括する会社のことであり、一般的にデベロッパーから依頼を受けて建築予算の見積もりから建築工事の進行など、建築に関する一連の作業をこなすのです。
ただし、場合によってはゼネコン側で建物のデザインや設計を担当するなど、デベロッパーとゼネコンの関係は企業間の関係や各案件ごとにその役割が変化する点は覚えておきましょう。
デベロッパーが主に手掛けているのは以下の5つの業務となっています。
- 街の再開発事業
- リゾート開発事業
- 大型商業ビルの開発事業
- 大規模場な宅地の造成事業
- マンション開発事業
一般的なビジネスモデルとしてのゼネコンや不動産会社との関係性としては、デベロッパーは建築関係の「企画側」であり、ゼネコンは「工事施工側」、不動産会社は「販売側」という立ち位置で覚えておきましょう。
有力中心企業紹介(現在の売上高上位3社)
デベロッパーの大手としては、以下の5社が挙げられます。
- 三井不動産
- 三菱地所
- 住友不動産
- 東急不動産ホールディングス
- 野村不動産ホールディングス
また、デベロッパーは大きく分けると3つに分類することが可能です。
1つは「総合デベロッパー」で、商業施設・リゾート地からマンション・オフィスビルまで幅広く開発事業を手掛けており、いわゆる「街づくり」といわれるレベルの大規模な開発事業を中心に行っています。
2つ目は「マンションデベロッパー」で、デベロッパーとしては中堅レベルに位置し、マンションや戸建ての開発を中心に手掛けるデベロッパーです。
3つ目は「公的デベロッパー」で、民間デベロッパーと協力して都市再生や基盤整備などを主導する都市機構などの公団・公社のことをいいます。
では、本記事ではデベロッパー大手3社である「三井不動産」「三菱地所」「住友不動産」の3社を比較してみましょう。

事業内容は、3社で大きく変わるところはないといえます。
資本金や従業員の規模が大きく、幅広い事業内容を支えている基盤がしっかりしている企業であることがわかります。
*1:https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/about_us/outline/
*2:https://www.mec.co.jp/j/company/about/index.html
*3:http://www.sumitomo-rd.co.jp/corporate/
有力企業3社の企業理念
デベロッパー大手3社が掲げる理念は以下のとおりです。
・三井不動産:都市に豊かさと潤いを
・三菱地所:私たちはまちづくりを通じて社会に貢献します
・住友不動産:信用を重んじ、浮利を追わず
2社が「都市・街」をキーワードとした理念を掲げています。
デベロッパーは街づくりに深く関わる業界であるため、建設による都市計画への貢献が大きく、企業理念にもこれらのキーワードが深く関わることになるのです。
有力企業3社の3年間の推移
次に、デベロッパー大手3社の、3年間の経営成績(連結)について見てみましょう。



ここ数年の推移においては「東京五輪2020」の影響を色濃く受けており、どの企業も順調に推移しているといえます。
ただし、新型コロナウイルスの影響のせいか、2社が最新年度において利益を下げていることについては、今後の動向を注視する必要があるといえるでしょう。
*7:https://profile.yahoo.co.jp/consolidate/8801
*8:https://profile.yahoo.co.jp/consolidate/8802
*9:https://profile.yahoo.co.jp/consolidate/8830
デベロッパー業界の最近の業界情報

デベロッパー業界には、現在それなりの強さの逆風が吹いている状況であると評価できます。
最大の理由は「新型コロナウイルス感染症」の影響による、不動産需要の大幅な低下です。
新型コロナウイルスの影響により、企業は設備投資に対する消極的な動きがみられており、とくにインバウンド需要が極端に減少してしまった影響によりホテルなどの観光関係のビジネスにおいては不動産需要が大幅に減少せざるを得ない状況となっています。
また、業績悪化によりテナント料が支払えなくなったり、廃業するなどしてテナント料収入が減少している状況も無視できません。
東京五輪特需が終了してしまった現状において、オフィスやホテル需要が減少している状況は、デベロッパー業界に対して強力な逆風となって襲い掛かります。
一方で、デベロッパーの中には「海外開発」に力を入れている企業も多いです。
とはいえ、海外でも新型コロナウイルスの影響は未だに色濃く出ているところが少なくないため、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えた経営戦略のかじ取りが注目されるところでしょう。
デベロッパー業界の給与水準

デベロッパー業界、大手3社が有価証券報告書で公表している給与関連の情報は以下のとおりです。
・三井不動産(2020年度、第109期事業年度)
平均年齢:40.8歳、平均勤続年数:11.0年、平均年間給与:12,737 千円
・三菱地所(2020年度、第117期事業年度)*11
平均年齢:40.9歳、平均勤続年数:15.3年、平均年間給与:12,675,663円
・住友不動産(2020年度、第88期事業年度)
平均年齢:43.2歳、平均勤続年数:8.01年、平均年間給与:6,690,574円
デベロッパー業界も「年功序列」の傾向が強い企業が多いですが、その分だけ長く働けば多くの年収を得られる可能性が高いという魅力があります。