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PEファンドでのキャリア|仕事内容・役職・年収を徹底解説

皆さんはPEファンドという業種をご存じでしょうか。

「企業へ投資を行う会社」、「給料がとても高い会社」というイメージはあるものの、実際にどのような業務を行っているのかまでは、よく知らないという方も多いと思います。

実は、PEファンドは、外資投資銀行や戦略系ファームに勤める方がネクストキャリアとして目指すことも多い、ビジネスリーダーにとても人気の高い業界なのです。

この記事では就活をしていてもあまり聞くことのないPEファンドについて、仕事内容や年収、実態、入社する方法にいたるまで、詳細に解説します。将来PEファンドに入社するために、大学生がすべきこともご紹介しますので、皆さんのキャリア形成の助けとなれば幸いです。

PEファンドの仕事内容とは

PEファンドの業務内容とは

PEファンドとは「プライベート・エクイティ・ファンド」の略称です。バイアウト・ファンドと呼ばれることもあります。投資家から集めた資金を運用し、運用益を投資家に分配する投資ファンドの一種です。株式を取得して経営に関与することで企業の価値を高め、IPOや売却によって利益を得ることが目的です。

投資先企業に対しては、中長期の成長資金を供給するだけではありません。上述のとおり経営に深く関与するため、社外取締役として参画したり、外部人材を招へいしたりすることで、経営改革を行ないます。なお、プライベート・エクイティ・ファンドという名称ではありますが、投資対象は必ずしも非公開株(プライベートエクイティ)とは限らず、上場株を投資対象にすることもあります。

PEファンドの主な投資対象は、以下の4つに大別できます。

・大企業の子会社および非主流部門の売却(カーブアウト)

・事業承継に悩むオーナー系中堅企業の売却

・MEBO(マネージメント・エンプロイー・バイ・アウト)

・要再生企業

PEファンドは、キャッシュフローが安定している成熟企業に投資するのが一般的です。一方、ベンチャーキャピタルは創業後10年以内の新興企業に投資するケースが多く、Growth投資ファンドはPEファンドとベンチャーキャピタルの中間的な位置付けの投資をおこなっています。

PEファンドの社員の主な仕事内容は、以下の5つです。それぞれの業務について、順番に紹介していきます。

1. 投資案件の発掘(ソーシング)

2. 投資検討

3. 契約(エグゼキューション)

4. バリューアップ

5. IPOや売却(Exit)

1. 投資先の発掘(ソーシング)

ソーシングとは、投資先として相応しい会社を見つけることを目的に、投資する会社の候補を調査する業務です。主な業務は以下の2つです。

・投資銀行や商業銀行、証券会社、FAS(財務系コンサル)、M&A仲介会社などからもち込まれた案件を分析する。

・投資先として魅力的な会社を発見し、その会社の取引銀行を通じて会社にアプローチする。もしくはM&A仲介会社と協業し、会社にアプローチしてもらう。

また、これらの業務を行うにあたっては、金融機関とのつながりが不可欠です。金融機関と良好な関係を構築していると良い提案を受けられる機会が増えるため、金融機関とのネットワーク形成もソーシング業務の一部といえます。そのため、ソーシングには営業力が必要となります。

加えて、効率よく会社の調査を進めていくために、業種や業態、規模などについての見識をもつことも重要です。なお、一般的にソーシングはエグゼクティブ層が担当しますが、金融機関とのネットワーク形成や資料の作成は若手でも行います。

前述のとおり、PEファンドは基本的にキャッシュフローが安定している企業を投資対象とします。そのため、ソーシングの際は売上高のボラティリティが高い業界は避け、業績の安定しやすい業界を対象とすることがほとんどです。

2. 投資検討

投資検討では、ソーシングの段階で集めた会社の情報や案件についてより詳細な調査を行い、提案書を作成して社内の投資委員会に提出します。この時点の調査では、初期的なビジネスデューデリジェンス(3C分析等)、モデリングを行います。

提案が投資委員会で認められると、会社の買収判断をより深く検討するために外部の専門家を交えてさらに詳細な調査を実施。具体的な調査としてはビジネス・法務・財務・税務についてデューデリジェンスを行い、投資対象が大企業の場合にはITや人事等のより幅広い観点でも行います。

ビジネスデューデリジェンスは、自社で行う場合とコンサルティングファームに委託する場合が半々程度であり、モデリングは自社で行うことがほとんどです。会社がどの程度成長可能か見積もり、バリューアップフェーズでやるべきことを洗い出します。法務や会計、ITなどのデューデリジェンスは、外部の専門家に委託するケースも少なくありません。

また、投資対象の企業の役員に直接話を聞いたり、対象の業界に対して深い知見をもつ有識者に対して、エキスパートインタビューをしたりすることもあります。

これらの調査にはコストや対象企業の負担もかかるため、やみくもにすべての投資先候補を調査することはできません。一次入札後にデューデリジェンスを行いながら交渉を行い、その結果をもとに二次入札等のプロセスへ進むのが一般的です。

こういった調査を通じて投資先の会社の価値を正確に判断し、適切な投資判断をすることが、PEファンドの利益確保には重要です。

3. 契約(エグゼキューション)

上記のような調査を行った結果、投資対象に値すると判断した会社の買収を実行します。

4. バリューアップ

企業の買収後は、中長期的な経営プランを立てたうえで、経営に関与して企業価値の向上に取り組むことが重要です。バリューアップにおけるPEファンドの関与には、以下の4つの段階があります。

・モニタリング

モニタリングとは、投資先企業の経営が順調に行われているか、問題が発生していないかなど、PEファンドの社員が観察することです。

PEファンドは投資先の過半数の株式を取得するため、社員を取締役として投資先に派遣し、取締役会で状況を聞くといった方法でモニタリングを行います。PEファンドの投資先への干渉のなかでは、もっとも程度の軽いものです。

・経営支援

経営支援とは、取引先や仕入れ先の紹介など、投資先の会社経営を円滑に進ませるための支援のことです。モニタリングのみでは投資先の価値向上が難しいと判断した場合に行われます。

・CxOを派遣する

CxOの派遣は経営支援よりもさらに踏み込んだ、PEファンドによる投資先への干渉です。CxOとは、CEOやCFO、CTOなど、企業の業務および機能の最高責任者の総称です。しかし、CEOの派遣は経営陣の変更に近いものとなるため、このフェーズではCEOを除く責任者が派遣されることになります。

・経営陣を変える

経営陣を変えることは、PEファンドにとってはもっとも程度の重い投資先への干渉といえます。以上の4段階のうち、PEファンドは2と3の間程度の措置をとることが平均的です。

5. IPOや売却(Exit)

非公開株式の上場(IPO)や企業の売却(M&A)で、投資した資金を回収します。上場や売却で得た金額から、元本と投資家に分配するリターンを引いた分がPEファンドの利益です。

PEファンドの事業成功のひとつの目安としては、Exitで元手の2倍の資金を回収することが挙げられます。PEファンドでは1件あたりの成功時のリターンは、2倍から大きければ5倍程度になります。一方、VCの場合はアーリーステージでの投資になるため、大化けした場合はリターンが100倍を超えることも少なくありません。

そのため、PEファンドの場合はVCよりも1件当たりの投資成功率を上げる必要があります。具体的には、10件の投資に対して7件の成功が目安といえるでしょう。こういったリターンの考え方をもとにしているので、投資対象は前述した安定キャッシュフローの会社であることを重視する傾向があります。

PEファンドが得られる報酬は、Exitで回収した資金が元手の何倍であるかによって決まります。回収した資金から元手を引いた金額のうち、まずは投資家に約束したリターンを還元し、残りがファンドの報酬です。よって、ファンドの報酬は成果に応じたものとなります。

PEファンドの報酬は投資家との契約内容によりますが、一例としては、ファンド全体のリターンが2倍の場合、増加分の2割程度がファンドの報酬として分配されるケースがあります。

PEファンドの年収・仕事環境・魅力

PEファンドの年収・仕事環境・魅力

PEファンドで働く場合の年収や仕事環境、魅力について、それぞれ見ていきましょう。

年収

PEファンドの給与は、ベース(年俸)と一般的な意味でのボーナス(賞与)、キャリーボーナス(成功報酬)、社員自身がファンドに出資して得られるリターンの4つの合算で構成されています。

成功報酬次第ではあるものの、非常に高額な報酬水準として知られている業界です。なお、ベース+ボーナスは、コンサルティングファームと同水準か、少し高い程度の水準であることが一般的です。

PEファンドへ未経験で転職すると、基本的にはアソシエイトクラスからスタートします。大手外資系PEファンドのアソシエイトのおおよその年収水準は、1000万円台からスタートします。日系と外資系におけるベース+ボーナスの比較としては、日系の水準は徐々に上がっており近年その差は縮まってきていますが、依然として外資系の方が高額です。

そして特徴的なのが、キャリーボーナスの存在です。PEファンドは投資家の資金を預かって運用しているため、基本的には投資から得られた利益は投資家に返上されます。しかし利益の一定比率分は、ファンドが成功報酬として受け取ります。これが原資となって、キャリーボーナスとして社員に配分されるのです。

分配方法は各ファンドで異なるものの、生涯働かなくても良いほど多額の収入を得られる場合もあります。入社後ある程度経験を積んでシニア以上になれば、ベースやボーナスに加えてキャリーボーナスが得られ、億単位の報酬を受け取ることも珍しくありません。さらに高い役職者となると、10億円単位の報酬を得られることもあります。

忙しさ

PEファンドは一般的にハードワークの部類に入るものの、投資銀行や戦略系ファームと比較すると勤務時間は短い傾向にあります。ただし、当然ですが時期や状況によって忙しさは大きく異なります。

基本的にディールをしている時期や、投資先の経営が危機に陥っている時期は忙しく、一日中仕事をしているような状態も珍しくありません。一方で、そのほかの時期は1日8時間労働とまではいきませんが、ワークライフバランスは取りやすくなっています。

雰囲気

PEファンドは小規模であるため、経営陣のバックグランドや価値観、仕事のスタイルが社内のカルチャーに色濃く反映されやすい組織です。一例をあげると、投資銀行出身者が中心か、コンサル出身者が多いかといったことでも、雰囲気が異なることがあります。

また、日系ファンドは人間関係が比較的ウェットであり、業務外での交流は外資に比べて多い傾向にあります。一方で、外資系ファンドは外資系投資銀行などの出身者が多く、外資系でよく見られるプライベートと仕事を区別する雰囲気であることが大半です。

仕事の魅力

実際にPEファンドに勤務している社員からは、PEファンドの業務のなかでも、バリューアップのフェーズはやりがいが大きいという声がよく聞かれます。

バリューアップの仕事内容は、戦略コンサルタントの業務と類似します。ただし、戦略コンサルはあくまでクライアントである経営者のサポート役という立場です。一方でPEファンドの社員は、バリューアップを行う企業をファンドが買収しているため、自身も意思決定者の一人であり、企業価値の向上に責任を負っています。そのため、外部のプロフェッショナルファームとは異なり、「今回のプロジェクトの範囲外だから対応しない」といったことは出来ず、自身が当事者として多岐にわたる経営課題に対応していくことになります。

企業経営に対する責任やリスクを経営者と共有している分、裁量が大きく、主体性をもって業務に取り組めることがやりがいにつながりやすいでしょう。

PEファンドのネクストキャリア

PEファンドのネクストキャリア

PEファンドのネクストキャリアと題しましたが、待遇が非常に良いため、PEファンドの社員は長く勤める傾向にあります。しかし、PEファンドから転職するケースがないわけではありません。

具体的には、事業会社のM&A部門やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、ベンチャー企業の立ち上げ、事業会社のCxO(特にCFOが多い)、他PEファンドへの移籍などが挙げられるでしょう。また、豊富な実績をあげてファンド組成に自信があれば、自身でPEファンドを起業するということも可能です。PEファンドへ入社したコンサル出身者が、仕事内容が合わずにコンサル業界へ戻るということもあります。この場合でも、PE時代に培った投資家視点や経営者感覚が活かされて、コンサル業界で大いに活躍するというケースが多く見られます。

PEファンドの主要プレーヤー

PEファンドの主要プレーヤー

外資系PEファンドでは、KKRやベインキャピタル、CVCキャピタルパートナーズ、ペルミラ。日系PEファンドではアドバンテージパートナーズやユニゾン、ポラリス、インテグラルなどが、主要なプレーヤーとして挙げられます。

ただし、PEファンドは規模によって扱う投資先企業の規模が異なるため、必ずしも大きいファンドにいくのが良いとはいえません。自分が携わってみたい、もしくは経営改善において得意な企業規模が明確であれば、それに合致したファンドを調べて入社を目指すと良いでしょう。

PEファンドは新卒でも就職できるか?

「新卒でPEファンドに就職したい」と思って本記事を読んでいただいた方には申し訳ありませんが、PEファンドに新卒で就職するケースは稀です。PEファンドは基本的に、投資や経営に関連した業務経験のある社会人を採用しています。

PEファンドを目指すのであれば、新卒で入社できる別のプロフェッショナルファームで経験を積み、PEファンドに転職できるようにキャリア設計するのが良いでしょう。そこでここでは、PEファンドへの入社を目指している大学生がやるべきことや、PEファンドへのキャリアパスを中心に解説したいと思います。

PEファンドで働きたい大学生がすべきこと

PEファンドで働きたい大学生は、PEファンドに転職する際に高い評価を受けやすい業界への就職を目指しましょう。

PEファンドに入ったあとに何をしたいのか考え、そこから逆算して新卒で就職する業種を決めるとなお良いです。PEファンドでの投資に関心がある方は投資銀行やFAS(財務系コンサル)を、バリューアップに関心がある方は戦略コンサルで経験と積むと良いでしょう。

経験者採用でPEファンドに入社できるキャリアパスとは?

PEファンドに転職するなら、投資銀行(M&Aの遂行が主な業務になるので、IBD部門経験者が望ましい)やFAS、戦略コンサルのいずれかからが大多数です。仕事内容としても、PEファンドとの親和性が高いといえます。

公認会計士から直接の転職するケースも稀にありますが、公認会計士からFASへの転職を経て、PEファンドに入社するケースの方が一般的です。

まとめ

この記事ではPEファンドの仕事内容や魅力、年収をはじめとした労働条件・環境、PEファンドに入社する方法などを解説しました。

PEファンドに入社できる代表的なキャリアパスには、投資銀行やFAS、戦略コンサルが挙げられます。PEファンドへの入社を目指す大学生の方々は、第一歩としてこれらの業種への就職を目標にするのが良いでしょう。

投資銀行やFAS、戦略コンサルの仕事内容や就活のポイントをまとめた記事も、ぜひご覧ください。

[監修者プロフィール]
コンコードエグゼクティブグループ 主席エグゼクティブコンサルタント 大木 崇正
慶應義塾大学を卒業後、新日鉄ソリューションズ、アビームコンサルティングを経て、デロイトトーマツコンサルティング(現モニターデロイト)に入社。経営戦略及びM&A戦略の立案、実行支援を担当。その後、日系PEファンドのAZ-Starに参画。ヴァイスプレジデントとして投資案件発掘、投資実行、投資先のハンズオン支援・CXO採用等に携わる。現在はコンコードにおいて、PEファンドやコンサル業界を志望するビジネスリーダーのキャリア形成を支援している。

著者

ATLAS

未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト「ATLAS」の編集チーム。

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