「コンサルに行けば経営者になれる」は勘違い。成功した経営者が持つスキルとは? - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

経営者をめざしている人には「コンサルタントを経験したら経営者になれる」と勘違いしているケースが少なからず見られます。

コンサルティング業界を経験した後に、経営者になった人は多く存在しますが、必ずしもコンサルにいけば経営者になれるわけではありません。

本記事ではコンサルタントと経営者の違いや、経営者に必要なスキルについて解説していきます。

「コンサル=経営者」ではない

経営者をめざす場合、コンサル業界を経験すれば経営者になれると考えがちですが「コンサル=経営者」ではありません。

経営をしていくうえでコンサルティングのスキルは役立ちますが、それは経営者に求められるスキルのほんの一部です。

コンサルタントと経営者はまったくの別物といっていいでしょう。

本項では、経営者に必要なスキルと、コンサルティングで身につく技術の違いについて解説していきます。

経営者に必要なスキル

実際のところ、経営者になるだけなら登記をすればいいので、学生でも経営者になれます。

しかし、大切なのは「経営を続けられるか」という点です。

中小企業庁の「中小企業白書2022」によると、1,000万円以上の負債を抱えて倒産した企業は、2021年だけで6,030件。また休廃業・解散も含めると、54,709件にものぼります。

2021年は過去5年間でもっとも低い水準でしたが、毎年それ以上の事業者が休廃業を余儀なくされていることがわかります。

(参照:中小企業庁『中小企業白書2022』)

経営がうまくいかずに倒産・廃業してしまうのは、経営者が必要なスキルをもち合わせていないことが原因のひとつです。

経営者にはリーダーシップが求められます。リーダーとして最終的に決断を下し、組織を導くことができなければ、会社は倒産・廃業してしまうでしょう。

コンサルタントのように細かな課題を解決できても、ここぞというときに決断できないリーダーは潰れてしまいます。

コンサル業界で身につく技術

コンサル業界で身につくのは「職人」としての技術です。

クライアント企業が抱えるのは「自社で解決できないほどの悩み」です。いかに難しい問題でも、クライアントが納得する形で課題を整理し、わかりやすく解説する能力がコンサルタントには求められます。

以上の違いを比べると、コンサルを経験すれば経営者になれるわけではありませんが、経営者へのステップのひとつになることがわかります。

特にコンサルタント・経営者の両方の素養がある人にとって、コンサルの経由は有効な手段といえるでしょう。

コンサルタント出身で成功している経営者とは

コンサルタント出身で成功している経営者とは

コンサルタントから経営者になり、成功する人の共通点として「リーダーシップ」をもっていることが挙げられます。

もともとリーダーシップをもっていて、組織を引っ張る力のある人がコンサルタントになり、戦略立案・課題解決の技術を育て、経営者になったパターンです。

コンサルの経験を通じて、幅広いプロジェクトをこなした経験や、各部門が意図すること、組織改革の手法などを学べることから、コンサル経験が「ムダ」になることはありません。

コンサルタント出身の経営者たち

コンサルタント出身で、成功を収めている経営者は以下のとおりです。

  • 樋口泰行(日本マイクロソフト株式会社代表執行役社長)
  • 足立光(シュワルツコフヘンケル株式会社代表取締役会長)
  • 西浦裕二(アリックスパートナーズ副会長・マネージングディレクター)
  • 藤岡清高(株式会社アマテラス代表取締役社長)
  • 南波智子(株式会社ディー・エヌ・エー取締役)
  • 伊藤賢司(JSホールディングス株式会社代表取締役)

このように、数々の経営者がコンサルを経験し、培ったスキルを活かして経営を成功に導いています。

コンサルタント出身ではない経営者たち

名経営者といわれる人のほとんどは、コンサル業界出身ではありません。コンサル出身でなくとも、自身が創業者や事業会社でキャリアアップしていることがほとんどです。

コンサル出身でない名経営者は、以下のとおりです。

  • 松下幸之助
  • 本田宗一郎
  • ビル・ゲイツ
  • ジャック・ウェルチ
  • カルロス・ゴーン

これらの名経営者に共通しているのは、事業を進めながらさまざまな経験をし、キャリアアップにつなげていること。

このことからも、経営者にコンサルティングの経験は必須でないことがわかります。

経営者に向いていない人とは

経営者に向いていない人には「会社員としてクライアント企業の課題解決をする職人タイプ」が挙げられます。

このタイプの人は、コンサルタントとしては優秀な成果を出せますが、経営者向きとはいえないでしょう。

ただ、クライアント企業の悩みを解決できる点では優秀な人材であり、特殊技能を磨いたプロフェッショナルです。

経営者に向いていなくとも優秀な人材には間違いないので、優秀さのベクトルが異なります。

経営者に向いていないコンサルタントのキャリアの積み方

「自分が経営者に向いていない」と感じているコンサルタントの場合、どのようにキャリアを積むのがいいのでしょうか。

経営者へのステップアップ以外にも、以下のようなキャリアが考えられます。

  • コンサルティングファームを点々とし、ステップアップ
  • メーカーのマーケティングや経営企画などの部門へ転職
  • ベンチャーのCFO / CXOとして財務面や実務面での戦略立案を担当
  • コンサル業界から離れる
  • 個人で独立する

経営コンサルタントは「コンサルティングファーム」と呼ばれる企業に所属するのが一般的です。

キャリアの積み方のひとつとして、コンサルティングファームを点々とし、ステップアップを図る方法があります。

また、メーカーの企画やマーケティング部門へ転職する、事業会社での財務や経営企画といった経営中核メンバーとして転職する、というキャリアの積み方も可能です。

また、組織には所属せず、個人でコンサルタントとして独立する方法も考えられます。

自分にあったキャリアの積み方を考え、行動に移しましょう。

最近話題の「ポストコンサル」とは

最近話題の「ポストコンサル」とは

最近では、転職市場で「ポストコンサル」が話題です。

ポストコンサルとは、コンサルティングファームでコンサルティング業務を行なってきた経験者を指します。

近年ポストコンサルが注目を集めている理由や、ポストコンサルとして知られている経営者について、まとめました。

ポストコンサルが注目される理由とは

「ポストコンサル」として、さまざまなコンサルティングファーム出身者が注目されている理由は「若い世代の経営者候補獲得」です。

多くの企業が20〜30代のポストコンサルを獲得し、経営者候補として「リーダーシップ」を身につけるよう育成しています。

ポストコンサルはもともとコンサルタントとして活躍していたため、高い問題解決能力をもっているのがメリットです。

そして、企業でさまざまな経験を積みながら、リーダーとしてのスキルを磨いていきます。

若くして「問題解決能力」「リーダーシップ」の両方を培っているため、さまざまな業界から経営者候補として注目を浴びているのです。

ポストコンサル側としても、若い頃から企業の経営に携われ、報酬も魅力的なことから、人気の業種です。

ポストコンサルとして知られている経営者

以下のように、ポストコンサルとして若い頃から経営に携わっている経営者は、数多く存在します。

  • 岩瀬大輔(ライフネット生命 代表取締役社長兼COO)
  • 遠藤直紀(ビービット 代表取締役)
  • 荻原英吾(日清食品ホールディングス アジア総代表)
  • 加藤智久(レアジョブ 代表取締役会長)
  • 仮屋薗聡一(グロービスキャピタル マネージングパートナー、日本ベンチャーキャピタル協会会長)
  • 小沼大地(NPO法人クロスフィールズ 共同創業者、代表理事)
  • 高島宏平(オイシックス/ごちまる 代表取締役社長、NPO法人 TABLE FOR TWO 理事)

上記からわかるように、ポストコンサルの転職先は多様化が進んでいます。

コンサルタントの新しい選択肢「プロ経営者」とは

コンサルから経営者への新しい選択肢として挙げられるのが「プロ経営者」です。従来の経営者といえば、自身が起業するイメージが強いものでしたが、経営者として雇用される働き方も注目されています。

プロ経営者の働き方や役割、めざすうえでやるべきことを見ていきましょう。

プロ経営者とは

プロ経営者とは自分で起業するのではなく、複数の会社を経営者として渡り歩く人を指します。いわゆる「雇われ」の経営者です。

一般的な企業とは異なり、外部から経営者として招き入れるのが特徴で、新卒から出世するパターンとも異なります。

欧米では以前から知られていた手法ですが、日本でも2014年頃から取り入れられ、その動向に注目が集まりました。

プロ経営者を取り入れる企業が増えた背景として、市場のグローバル化や社会環境の変化が考えられます。企業を安定させつつ成長させるために、時代の変化への柔軟な対応が求められています。

しかし、社内の人間では派閥やさまざまな事情によって、判断が左右されがちです。そこで、外部から人材を招き入れることで、社内の改革を進められるのです。

プロ経営者の役割

外部から招き入れられる人材であるプロ経営者は、経営者として企業の価値を高める役割があります。

以下の3つのサイクルを繰り返すことで、あらゆる企業のバリューアップを狙いましょう。

  • 企業からの依頼(ヘッドハンティング)
  • CEOとして就任
  • 企業のバリューアップを狙う

プロ経営者は企業からの依頼で、直接ヘッドハンティングされることがほとんどです。その後、トップとして就任し、会社の経営に携わります。

経営手腕を発揮し、企業のバリューアップを成功させた人材は、さらに別の企業からヘッドハンティングされるでしょう。

このサイクルを繰り返すため、プロ経営者として渡り歩いている人方は経験豊富で、企業からも獲得したい人材として認知されます。

プロ経営者が失敗するパターン

プロ経営者が失敗するパターン

企業のバリューアップをめざすプロ経営者ですが、失敗するパターンとして以下の3つが挙げられます。

  • 自社商品やサービスに対してリスペクトがない
  • 次のキャリアばかり気にしている
  • プロパー社員を軽視する

これら3つの失敗パターンについて、解説していきます。

自社商品やサービスに対してリスペクトがない

コンサルとしての経験が豊富なプロ経営者であっても、自社商品やサービスに対してリスペクトがなければ失敗しやすいでしょう。

自社商品やサービスに興味がない場合は、企業の価値や強みを引き出せないため、経営によるバリューアップをめざすのは困難です。

経営を成功させるには、自社の商品やサービスを深く理解し、本来の価値を徹底的に磨くことです。自社の価値を見極められない経営者は、会社にとってマイナスとなってしまいます。

次のキャリアばかり気にしている

プロ経営者のなかには、さまざまな企業を渡り歩いてきた経験やスキルを自著にまとめ、出版する人も多く存在します。しかし、在任中から次のキャリアについて言及することは、社員のモチベーション低下にもつながるため、注意が必要です。

特に、自社に愛着のある従業員からすると、会社の経営に集中していない経営者に対して憤りを感じるでしょう。

自分自身のキャリアにこだわるあまり、在任中の会社の従業員がついてこないとなると、企業のバリューアップは困難です。

プロパー社員を軽視する

自分が経営者に就任した際、これまで自社を支えてきたプロパー社員を軽視することは、経営者としての失敗パターンです。

内部の社員を幹部に登用せず、外部からの人材ばかり招き入れては、これまで会社を支えていた社員のモチベーション低下につながります。

場合によっては、良い意味で人材の代謝が活発になることも考えられますが、従業員の尽力なくして企業の成長はあり得ません。

プロパー社員を軽視せず、向き合う姿勢が大切です。

プロ経営者をめざすには

プロ経営者をめざすには、自分の現在位置を把握し、適切なキャリアプランを把握しましょう。20〜30代から長期的なキャリアプランを描くことで、自分に足りないスキルを洗い出せます。

また「いつまでにどうなっているべきか」といった期限を設けるのも重要です。期限を設けて逆算することで、具体的なキャリアプランを描きやすくなります。

若手のうちからキャリアについて、入念に計画を立てましょう。

自分に足りないスキルを補うためには、どのような経験や職場環境が必要なのか、日頃から考えるようにしましょう。

まとめ

コンサルティングを経験したからといって、必ずしも経営者になれるとは限りません。経営者には、問題解決能力だけでなく「リーダーシップ」が必要なため、コンサルタントのなかでも経営者に向いていない人も存在します。

経営者に向いていないと感じた場合、コンサルタントのキャリアの積み方には「ほかのコンサルティングファームに転職しステップアップ」「メーカーの経営企画やマーケティング部門への転職」といった方法が挙げられます。

経営者に必ずしもコンサルティングの知識は必要ありませんが、自分の企業に必要だと感じた場合は習得して損はないでしょう。

著者

トイアンナ

2012年、慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループのマーケターを経て、独立。
数千人の就活生から相談に乗った経験を活かして書籍『確実内定』を出版し、発行部数2万部以上のヒットとなる。
複数の就活媒体で監修・執筆を歴任。

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