
ケース面接は、就活のなかでも難易度が高い選考ステップのひとつです。通常の面接とは大きく異なり、その成否は採用活動全体を左右するといっても過言ではありません。この記事ではケース面接対策に求められる考え方と、典型的な例題パターンから解答例まで解説します。
- ケース面接とは?
- ケース面接の流れ
- フェルミ推定とは
- ケース面接では何が重視されるのか
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- プレッシャー耐性
- ケース面接の例題と回答例
- 売り上げや利益を増やす場合
- ポイント①現状の売上は「フェルミ推定」で
- ポイント②売上高アップ方法は「要素を分解しつつ定量的に考察」を
- 2択の場合
- 現在の社内の問題点
- 社内公用語を英語にするメリット
- 社内公用語を英語にするデメリット
- 社会問題を解決する場合
- ポイント①満員電車の現状はフェルミ推定で説明
- ポイント②満員電車の混雑を解消させる方法
- ケース面接の対策・練習方法
- ケース面接対策におすすめの本を読んで勉強する
- ケース面接の問題集を解いて経験を積む
- ケース面接の経験者に練習相手になってもらう
- ケース面接を「楽しむ」心構えを養っておく
- まとめ
ケース面接とは?

ケース面接とは、出題者が例題を提示し、解決方法の提言を求める形式の面接です。コンサル業界や外資系金融の採用で実施されることが多く、難易度が高い選考ステップのひとつといわれています。
ケース面接における出題内容は実際の経営課題に関するものが多く、学生が適切な仮説を組み立てて論理的に回答できるか、その問題解決のための思考力や取り組む姿勢から、現場で活躍できるかどうかの可能性が問われます。
ケース面接で重要なのは知識量ではなく、数字に裏付けされた実現可能な施策を筋道立てて示すことです。その能力は多くの練習問題に取り組むことで鍛えられるので、早期からの入念な対策と、繰り返しの練習が欠かせません。
ケース面接の流れ
ケース面接の基本的な流れは次のとおりです。
- アイスブレイク・トーク
- 出題・問題説明
- 候補者が自分の考えをまとめる
- 候補者が自分の解答を説明
- 面接官からの質問
- 候補者が回答(数回繰り返す)
- 候補者からの質問
面接官から問題を提示されてもその場で即答する必要はなく、面接官に断りを入れたうえでノートやメモなどに考えをまとめましょう。所要時間は1時間の面接なら10~15分、30分の面接なら5分程度が目安です。ホワイトボードを使った説明を要求されるケースもあります。
回答は単に結論を述べるだけではなく、答えに至るまでの思考プロセスも伝えることが重要です。
フェルミ推定とは
ケース面接で出題される問題は、大きく分けてフェルミ推定とケース問題の2つです。
フェルミ推定とは、未知の数字を論理と常識で推定する問題を指します。
一方、ケース問題は「スターバックスの売上を2倍に上げるには?」 といった、主にビジネスの課題解決に関する問題のことです。
ここでは、フェルミ推定を必要とする例題を見ていきましょう。ケース問題についても、のちほど説明します。
フェルミ例題
一例として「日本に電柱は何本あるか」という問題が提示されたとします。しかし「日本にある電柱の本数」を、感覚的に把握している方はおそらくいないでしょう。
そこで、
電柱の本数 = 1平方キロメートルあたりにある電柱の本数×日本の国土における平地面積
と、要素を分解して考えます。
まず路上にある電柱を思い浮かべ、電柱が立っているのは50メートル四方に1本ぐらいと推測します。そこから「2,500平方メートルあたりに電柱が1本ある」という仮説が立てられるでしょう。すると1平方キロメートル(=100万平方メートル)あたりに存在する電柱の数は、400本になります。
一方で、日本の国土は山地が多く平地が少ないため、電柱のあるエリアは全体の約20%と仮定しましょう。なお、日本の面積は約40万平方キロメートルなので、その20%の面積は8万平方キロメートルとなります。
400(本)×8万(平方キロメートル)=3,200万(本)
したがって、日本にある電柱の数は約3,200万本だと見なせます。
このように例題を聞いただけでは求めるのが困難な数値であっても、自分の感覚や知識で見通せるレベルまで課題を分解できれば、ある程度の説得力をともなう数値を導き出せるのです。
ケース面接では何が重視されるのか

ケース面接において、面接官から問われるポイントは主に以下の3つです。
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- プレッシャー耐性
それぞれ詳しく説明します。
論理的思考力
ケース面接においては、面接官から出題された答えのない課題の「解」を導き出すことが要求されます。このような高度な課題に取り組むためには、直感や思いつきではなく徹底した論理的思考に基づいた仮説検証が欠かせません。
ケース面接において求められる論理的思考には、以下の4つのステップがあります。
- 目標や前提条件を整理する
- 基本的枠組みや理論をもとに作戦を立てる
- 戦略に沿った実行プランを考える
- プランごとの成果をざっと計算し、手段を絞り込む
ここでは先ほどの電信柱の例題より、1つずつ説明します。
- 達成すべき目標や前提条件を整理する
具体的な提案を考える前に、与えられた課題に対し、目標として達成すべき数字や前提条件を明らかにしましょう。
今回の例題では、求める数字を「1平方キロメートルあたりの電柱の本数×日本の面積」と仮定しましょう。
ただし、前提条件として日本の国土は山や森林が多く、人が住める「可住地」は国土の約20% であるため、導き出した数字に20% をかける必要があるとも仮定します。
- フレームワークや理論をもとに作戦を立てる
目標や前提条件を整理できれば、次に作戦を考えます。このときMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive』=「ひとつのテーマをモレなくダブリなく、複数の要素に分類すること」の考え方を用いながら設問を網羅して細分化したうえで、整理して戦略を考えるとよいでしょう。
次に、具体的な数値を導きだすために、1平方キロメートルあたりの電柱の本数について検討します。正確な数字はわからないため、自分の体験から平方キロメートルあたりに電柱が何本あるかの仮説を導き出します。
- 作戦に沿った実行プランを考える
次に、2で立てた作戦を具体的なプランに落とし込みます。
まず、日本の面積は、約37万8,000平方キロメートルです。この手の問題はよく出題されるので、数字として暗記しておきましょう。
自分の生活上の体験から、電柱はおよそ50メートル四方に1本立っていると仮定します。面積に換算すると、「(50×50=)2,500平方メートルあたりに電柱が1本ある」という仮説が立てられるでしょう。すると1平方キロメートル(=100万平方メートル)あたりに存在する電柱の数は、400本になります。
以上から、解答を導き出すために必要な数字は出そろいました。
- プランごとの成果をざっと計算し、手段を絞り込む
最後に、作成した複数のプランのなかで最も合理的かつ適切な手段を考えます。
コミュニケーション能力
ケース面接においては、自分の考えを端的に相手に伝えるためのコミュニケーション能力が必要です。実際の面接においては、自分の考えたことをなるべく多く伝えようとするあまり早口になり過ぎたり、話が冗長になったりするケースが見受けられます。そうならないためにも、最初に結論と根拠を端的に語ったうえで、質問に対して的確に答えることを意識しましょう。
プレッシャー耐性
ケース面接では、プレッシャー耐性もチェックされます。なぜなら、実際に仕事をするうえで、限られた時間のなかで与えられた課題を解決しなければならない「時間的プレッシャー耐性」と、自分の頭で解決策を考え出さなければならない「精神的プレッシャー耐性」が求められるからです。
こうしたプレッシャーに押しつぶされないためにも、事前に入念に練習を重ねたうえで、等身大の自分で臨む姿勢が重要です。たとえ面接官の質問や指摘が自分の考えとは違っていても、ひとまず相手の意見を受け入れ、それを踏まえたうえで自分の仮説を進化させられれば、面接官からの評価も上がるでしょう。
ケース面接の例題と回答例

ここからはケース面接を想定した例題と、その回答例をみていきましょう。
売り上げや利益を増やす場合
例えば、以下のような例題が挙げられます。
例題: 以下の前提条件のラーメン屋の売上推計と、売上を50%アップさせる方法を考えてください。
前提条件:
- 営業時間 10時~22時
- 席数 20席
- 休業日 なし
ポイント①現状の売上は「フェルミ推定」で
現状の売上高はフェルミ推定を使用し「客数×単価」で計算します。単価は800円程度と仮定し、客数は回転数で求めましょう。
一人が滞在する時間を30分とすると、最大で1時間に2回転になります。ピークタイムに2回転に達すれば、客数は以下のように試算できるでしょう。
- 10時〜11時:0.5回転→20席×0.5×1時間=10人
- 11時〜13時:2回転→20席×2×2時間=80人
- 13時〜16時:0.5回転→20席×0.5×3時間=30人
- 16時〜18時:1回転→20席×1×2時間=40人
- 18時〜20時:2回転→20席×2×2時間=80人
- 20時〜22時:1回転→20席×2×1時間=40人
以上により1日の客数が280人、客一人あたりの単価が800円であることから、売上は22万4,000円になります。
ポイント②売上高アップ方法は「要素を分解しつつ定量的に考察」を
次に、売上高を50%アップさせる方法を考えます。ここでは、客席と客単価をそれぞれ20%前後増やし、両方合わせて50%アップを目指しましょう。
来客数を増やす
- 一人あたりの滞在時間を短くしピーク時の客数を増やす
- 店を大きくしてピーク時の客数を増やす
- ポイントカードを発行してリピーターを増やす
- 割引や商品の工夫でオフピークの客数を増やす
客単価を上げる
- 追加メニューを設定する
- 高価格メニューを増やす
- 差別化要素を作りメニュー自体の価格を上げる
出された案から説明しやすいものを、ピックアップして計算します。
例えばポイントカードを導入したことでお客さんの数が30%増えれば、客数は364人になります。
また、客単価を上げる方法として追加メニューの設定を考えてみましょう。追加メニューの平均単価を300円とし、1/2の客が頼むと推計すると、客単価は950円になります。以上により364×950=345,800、約34万6千円となり、両方あわせて50%アップを達成できます。
2択の場合
ビジネス課題以外で多いのは、特定の例題に対して賛成・反対のどちらとするかを回答する課題です。
例題:社内の公用語を英語にするべきか?
このような課題は、比較的自由度が高いのが特徴です。そのため、最初に自分で定義を決めておく必要があります。定義決めができたら、その課題に対するメリット・デメリットを書き出しましょう。
現在の社内の問題点
- 海外企業との交流が増えている
- 通訳を雇う費用がかかる
- 今後、海外進出を目指している
社内公用語を英語にするメリット
- 海外企業との連携が取りやすくなる
- 通訳を必要としないため、通訳の費用がなくなる
- 会社の発展と向上につながる
社内公用語を英語にするデメリット
- 個人が仕事以外に英語力を身につけるための時間が必要
- 研修費やセミナー代がかかる
- 英語を話せるようになるには時間がかかる
このように整理すれば、賛成・反対を決めるうえで重要な要素をピックアップしていきます。会社が今後、世界進出を視野に外国と交流しているなら、英語を公用語にするデメリットよりもメリットが大きいと判断できます。
デメリットの多くを打ち消せたなら、賛成意見として考えをまとめましょう。
社会問題を解決する場合
最後のパターンは、社会問題の現状分析と解決方法の提案です。こうした問題の多くは、定量的に推定することで現状分析が可能なテーマになっています。
例題:東京都心における満員電車の現状と、現状をよりよくする方法は何か?
こうした例題では前提条件が与えられることは少なく、自力で仮定を置きながら推定することが求められているケースが多く見られます。
ポイント①満員電車の現状はフェルミ推定で説明
まず、前半のテーマである満員電車の現状は、フェルミ推定で導き出します。大事なのは導出に至る過程です。論理的に無理のない前提を置きながら、推定していきましょう。
満員電車の混雑が深刻な時間帯のひとつは、朝の通学・通勤ラッシュでしょう。このときの利用者数を導き出すためには、首都圏の人口と労働者・学生の割合、鉄道利用者の比率から推定します。また、満員電車の状況を説明するために、電車の混雑率についての具体的数値にも触れられるとよいでしょう。
朝の鉄道利用者=首都圏人口×労働者・学生の割合×鉄道利用比率
混雑率=朝の鉄道利用者÷定員
首都圏の人口は3,000万人程度であり、労働者・学生の割合は総務省による年齢別人口動態などで推定できます。年齢別人口は単純割りで回答してよいでしょう。
便宜上、0〜100歳までの人口が均等だとすると、1歳あたり約30万人がいる計算になります。16〜18歳までの人のほとんどは通学しているので、ここでは100%とします。
一方、労働者は19〜65歳の人ですが、失業者・専業主婦(主夫)などを考慮して80%としましょう。以上の前提から、首都圏の労働者・学生人口は1,128万人と推定されます。
鉄道利用率を便宜上40%とすると、鉄道利用者は491万人と推定されます。
次に、鉄道の収容人数を算出しましょう。電車1両あたりの定員を150人、地下鉄も含めた平均的な車両の数を8両とすると、1,200人になります。簡素化するため東京の路線数は80とします。
首都圏電車の定員=1両あたり定員×両数×ラッシュ時運行本数×路線数
ラッシュ時の平均を7〜9時の2時間、電車の運行間隔を平均4分とすると、首都圏電車全体のキャパシティは306万人です。
結果として、
混雑率=実際の利用者数÷定員=491÷306=122%
となるでしょう。
ポイント②満員電車の混雑を解消させる方法
こうしたテーマにおいて、まずは目指すゴールを数値化しなくてはなりません。ここでは122%の混雑率を、平均100%まで下げることを考えます。
混雑率=朝の鉄道利用者/定員
これらを踏まえると「朝の鉄道利用を減らす」「定員を増やす」といった手段が有効です。
朝の鉄道利用者=首都圏人口×労働者・学生の割合×鉄道利用比率
解決策としては、以下のような方法が考えられるでしょう。
- 学校や企業の開始時刻を後ろ倒して、9時以降の通勤・通学を促進する「オフピーク」を実施
- 都心以外の首都圏での企業誘致や政策などによる雇用促進
これらは短時間で効果を推定するのが難しいので、定員増の手法と組み合わせたうえで、解決案のひとつとして提案するのが現実的でしょう。
首都圏電車の定員=1両あたり定員×両数×ラッシュ時運行本数×路線数
電車の収容人数のキャパシティを上げるなら、両数・ラッシュ時運行本数の拡大が考えられます。
- 平均両数を10→12両に増やす
- 路線を増やし、ラッシュ時の運行本数を上げる
このように運行車両数を20%増やしつつオフピークを推進することで、混雑率マイナス22%を達成できると考えられます。
ケース面接の対策・練習方法

ケース面接の主な対策・練習方法は、以下の4つです。
- ケース面接対策におすすめの本を読んで勉強する
- ケース面接の問題集を解いて経験を積む
- ケース面接の経験者に練習相手になってもらう
- ケース面接を「楽しむ」心構えを養っておく
順番に解説していきます。
ケース面接対策におすすめの本を読んで勉強する
まずはケース面接対策用の本を読んで、知識をインプットしましょう。十分なインプットがあってこそ、適切なアウトプットが可能となります。
ケース面接対策におけるインプット用の教材におすすめする本は『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』です。
フェルミ推定に関する知識のインプットに特化した内容です。実践問題は掲載されていないものの解説が理解しやすいので、初めて読むケース面接対策の本に適しています。
ケース面接の問題集を解いて経験を積む
本を読んで十分に知識をインプットしたら、次に問題集を解いてアウトプットの経験を積みましょう。おすすめの問題集は、次の2冊です。
- 『東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート 』
問題解決ケースを50のフレームワークで解説しています。解き方を身につけることで、実際の類題にも応用できるでしょう。
- 『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』
フェルミ推定のパターンを解説しており、実際に問題を解くことで実践力を養えます。比較的やさしい内容なので、初心者の方にもおすすめです。
ケース面接の経験者に練習相手になってもらう
実際にケース面接を突破した方のアドバイスは、非常に説得力があります。もし知人や先輩に合格者がいるのであれば、ぜひ練習相手になってもらいましょう。
ケース面接を「楽しむ」心構えを養っておく
実際にケース面接を通過した合格者の多くが「楽しい面接だった」というコメントを残しています。たしかにケース面接は社会の第一線で働いているビジネスパーソンとの議論ができる、貴重な機会でもあります。
もちろん、その境地に至るためには多くの訓練を積む必要がありますが、やるべき備えをしたらあとは思い切って、ディスカッションを楽しむぐらいの心構えを養っておくとよいでしょう。
まとめ
ケース面接対策の秘訣は、有益な情報収集と対策を行い、経験を積むことです。ここで役立つのが、未来を作るリーダーへの就活キャリアサイトATLASです。ATLASが総力を挙げて取材・編集したコンテンツをぜひご活用いただき、自信をもって本番に臨めるようにしてくださいね。