三井物産株式会社
三井物産は五大総合商社の中で最も古くからの歴史を持つ企業である。1876年、開国後明治政府が近代化を推し進めていく中で、衣類・石炭・生活用品といった輸出入の主力となる分野を中心とした貿易会社としてその長い歴史は始まった。封建制度が解体され明治維新の施策で国内が変化していくと共に、軽工業・農業を中心とした技術革新にも大きく貢献したと言われている。法人の組織としては当時の旧三井物産と現在の三井物産は全くの別会社という位置づけにはなるものの、国内トップの貿易会社であった潮流を汲む形で企業としても発展していくことになる。同業の三菱商事の英語表記が"Mitsubishi Corporation"であることは有名であるが、三井物産の英語表記は”MITSUI & CO., LTD.”である。名称としてCOとの間を &で繋ぐのは珍しいが、これは「会社(Company)」と「仲間(Company)」が対等であるという意味が込められていると言われており、「人の三井」と言うように個を尊重した集合体としての性格を反映している。 組織形態としては、三菱商事や伊藤忠商事が明確なカンパニー制の形態を取っているのに対し、三井物産は直接事業部が紐づく形になっている。実質的にはオペレーティングセグメントがカンパニーに近い役割を果たしていると考えられるが、特徴の一つと言うことができるだろう。 2022年3月期末決算では、最終利益が9,147億円と三菱商事に次ぐ過去最高益を達成しており、2023年も中間決算時点で最終利益見込みが9,800億円と更なる更新が期待されている。特に2018年3月期で昨期と同様に業界全体で好調の中で、(丸紅・豊田通商含む)七大商社のうち唯一過去最高益を逃した実績からも、直近の好調は意味深いものになった。事業ポートフォリオとしては伝統的に資源分野が強いとされる三井物産だが、直近の好調も資源価格の高騰や為替相場の円安で大きな追い風を受けている。2014年以降コーポレートスローガンに360° business innovationを掲げ、総合商社のラーメンからミサイルまでとも言われる総合商社の事業領域の広さに加えて経営の多角化や社会に変革を与えるプレゼンスを高める方向に動いている。実際中期経営計画2023の中でも「ポートフォリオ経営」が一つのキーワードとなっており、経営資源の効率的な分配と適正化が今後の経営の鍵を握っていくだろう。